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悪い女 ページ26
シゲアキが越してくるとなれば、さすがにもう少し家具がいる。
彼は少しずつ私物を運び込み、年が明けてから向こうの部屋を解約する、と言った。年末年始の特番に向けて、これから撮影で家を空けることが増えるそうだ。
「年末になったらウチの家に行こう」
シゲアキが作ってくれた朝ごはんを食べていたら、急に改まってそんなことを言い出すから、思わず伸ばした箸を卵焼きに突き刺してしまった。
「うっ、緊張する・・・美味しく食べていただけるかしら」
「バカだねー」
あはは！と大きな口を開けて笑ってるけど、案外彼も緊張するのかもしれない。ひとりっこって言ってたもんね。きっと親の期待を一身に受けて育ってきたんじゃないかしら。私も、そうだった。
「出会いと経過をなんて説明するか考えないとね。友だちの彼氏を神社の境内で寝取りましたーって、私加藤家出禁になると思う」
「それ俺も出禁だわ」
ぐふふ、っていたずらっこみたいに笑ってる。こどもみたいでかわいい。
「うまくやれるかなあ」
「Aはそのままでいいよ。無理に合わせなくていい。俺の家のことは俺がやるし。ま、普通のサラリーマン家庭だから、難しく考えないで」
「結婚式とかしないよ？」
「写真だけは撮ろう。俺がほしい」
急に黒曜石がほんのりと炎を抱く。じっとりと見つめられて、お腹の奥がざわめく。
「・・・早く食っちまおうぜ」
ドキドキしすぎて、食べられるかしら。
家を出るまで、あと１時間。
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作者名：Niina* | 作成日時：2023年8月2日 20時
