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悪い女 ページ25
視線を感じる。
という経験は今に始まったことじゃない。隆平もそうだったけど、どうにもストーカー気質の男に好かれる体質らしい。
マンションは住人と許可した人間以外入って来れないし、しばらくは家とサロンを往復するだけで、外に行くときには必ずシゲアキを伴った。
「まだいるの？」
マンションの入り口で振り返ったら、シゲアキが片眉だけを器用に跳ね上げた。おばけみたいな言い方するのよね。手越くんのせいかしら。
「うーん、いるような、いないような。気にしすぎかもね」
「マジで、警察に言った方がいいんじゃない？」
ぎゅ、と繋いだ手をかたく握りしめられた。不安そうなシゲアキに向かってゆるりと笑顔を返す。
「お化けがいるっていっても、警察には何もできないからねー」
「茶化すな」
鍵を認証装置にかざす前に、ぐっと手を引かれた。
眉間に皺を寄せて、綺麗な顔は怒っていてもやっぱり綺麗。うっかり見惚れていたら、への字に結んだ口が開く。
「何かあってからじゃ遅いんだからな」
「わかってる。じいさんとばあさんになるまで一緒にいるって約束したもの。勝手に死ねないわ」
ふ、とシゲアキの眉間が緩んだ。握りしめる手の力は緩まないけど。
「ねえ、そんなに心配なら、もっとずっと一緒にいればいいんじゃない？」
ぽかん、と今度は彼の大きな目が見開かれた。
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作者名：Niina* | 作成日時：2023年8月2日 20時
