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悪い女 ページ16
「そういえばさ、あの話、どーする？」
モグモグと咀嚼していたパスタをごくんと飲み込んで、首を傾げる。
「あの話？ってどの話？」
「結婚だよ。どーする？する？」
あっ、その話か。
「俺はいーよ、別に今すぐでも」
「うん・・・でもさ、シゲアキって兄弟とか、いる？」
「いないね。ひとりっこ」
「そっかぁ・・・」
そう。私だってちょっとは考えたのだ。シゲアキと結婚したら、もれなく彼のご家族との付き合いが始まる。
両親もいない、親戚もいない。例えば、よく夏休みにはおばあちゃんちに行ってたとか、法事で親戚一同集まってとか、私にはそういう付き合いの経験が、まるでない。
「別に気にしなくていーよ。向こうだって、俺が結婚するって言って、なんか言う人たちじゃないから」
「そう、なの・・・？でも挨拶とかするんだよね・・・？」
「あー、まぁね。結納みたいなやつ？ま、そんな堅苦しくなくてもいいか。顔合わせみたいな、一回一緒に食事でもいくか」
トントンと彼の中で話が進んでいく。
斜め上を見つめて予定を組み立てていたらしいシゲアキが、黙った私をハッと見た。
ちょっと困ったように眉を下げて、白い歯を覗かせる。
「大丈夫だって！とって食ったりしないから」
手が伸びてきて頭を撫でてくれる。
「美味しく召し上がっていただければ本望です」
「だから食わねーって！」
シゲアキの笑い声に、不安でざわめく心が凪いでいく。
*
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作者名：Niina* | 作成日時：2023年8月2日 20時
