今日:6 hit、昨日:36 hit、合計:4,433 hit
小｜中｜大
悪い女 ページ11
仕事用のワンピース姿のまま、財布の入ったポーチにスマホを突っ込む。
駅前でタクシーを捕まえて、夜の街を走り抜けた。
「あー！Aちゃん、こっちこっち！」
カジュアルなバーには深夜近くなってもそこそこ人が入っている。フロアを突っ切って行くと、奥のソファ席で立ち上がった小山さんが、ぶんぶんと手を振っていた。
その横にいたシゲアキは、頭を抱えるようにうなだれていた。目の前に置かれたショットグラスはカラだ。いったいどれだけ飲んだんだか。
「ありがと、小山さん」
困ったように眉を下げて苦笑いを浮かべた小山さんが場所を代わってくれて、シゲアキの隣へそっと腰を下ろす。
「しげあき」
ピクリ、とその肩が揺れた。寝てはいないみたいだ。
もう一度呼びかけると、ノロノロと漆黒の髪が持ち上がる。
「A・・・？」
焦点が合っていないほどではない。けれど、ばっきりと刻まれていたはずの二重は、どろりと重そうだ。
「あー・・・」
マズった、みたいな。安心した、みたいな。複雑な表現を浮かべたシゲアキが、魂さえ抜け出ていきそうなほど大きなため息をつく。
「俺さ」
「うん」
「別れるって、言ってきた」
「うん、そっか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Niina* | 作成日時：2023年8月2日 20時
