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悪い女 ページ8
「キスして」
パチクリと目を見開くと、彼のまん丸な黒目が全部姿を見せる。
「いいよ」
屈みこんで私のそれを捉えた彼の唇は、何度か柔く食むとゆっくりと離れた。
「あのさ」
切なげに細められた瞳。
彼の左手が頬を包み、親指が目の下をなぞっていく。
「これっきりじゃ、ないよな・・・？」
むっ
思わず顔をしかめたら、シゲアキが急にアワアワしだした。
「や、だってさ！俺だけが盛り上がってて、そんなつもりはないとか言われたらどうしようって・・・」
「そんなわけないじゃん・・・ばか」
そんなビッチだと思われてたのか・・・いや、状況的にはだいぶビッチではあったけど！それはちょっと悲しい。
「ごめんて！顔上げて！」
口を尖らせたまま俯いていたら、両手で顔を掬い上げられた。
「ごめん。俺もそんなつもりはないから・・・って、ややこしいな！いや、違うから。おまえと・・・Aとちゃんと付き合いたい。昨日の今日で、何言ってんだってハナシだけど」
じとっと睨むと、喉をこくりと鳴らしたシゲアキが真剣な眼差しで覗き込んでくる。
「出会っちゃったんだろ、俺ら」
「そうね」
あたたかい彼の胸の内に閉じ込められる。安っぽいボディソープの向こうに確かにシゲアキの匂いを感じて、胸が甘く締め付けられた。
・・・んだけど。
「あ」
「え、何？」
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作者名：Niina* | 作成日時：2023年7月22日 17時
