STAY WITH ME (ページ43)

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悪い女ページ43

「そっちこそ、『娘さんを僕にください』って言った途端に、指詰められたりしねーだろーな？」

「それは大丈夫。親、いないから」

ぴくりとシゲアキが身を震わせた。前かがみだった姿勢をゆっくりと正す。

「いないの？ご両親とも？」

急に丁寧な口調になった。シゲアキって、きちんと育てられてきたんだろうな、と思う。居住まいから人の良さが滲み出ちゃってる。そんなところも、好き。

「うん・・・あ、ごめん、そろそろ下に降りなきゃ。あの、このまま夜まで、いてくれる？」

「あ、ああ。でも着替えとかないし、一旦帰ってまた来るよ。ここからの方が職場に近いし」

「わかった。ほんとうに、ごちそうさま。全部やってもらっちゃってごめんね。ありがとう」

「いーよ。ほら、早く行きな」

私が立ち上がると同時にシゲアキも席を立って、ぎゅっとハグをする。

「行ってきます」

「おう。またあとでな」

柔らかな笑みを浮かべて手を振ってくれたのに。

最後のお客様を送り出して家に帰ると、シゲアキの姿は、もうどこにもなかった。