悪い女 ページ30
そのまま、大きな瞳がまっすぐに目の中を覗いてくる。
「ねえ、本当に、もう気持ちはないの？」
「ない。隆平には悪いけど」
元々お客様だった彼に告白されて、断り続けて半年。根負けしたのは、私の方だ。
彼は仕事の関係でまっすーとも繋がっていて、手越くんとも顔馴染みだ。だから、複雑な心境なのかもしれない。
「じゃあ、オレからアドバイス」
まっすーの肩を抱くように隣へ並んだ手越くん(だけど、その手はすげなく振り払われた)は、眉間にしわを寄せた。
「別れ話は家でしないこと。これ厳禁。できれば昼間、それで、ネチネチ時間かけないほうがいいよ」
「わかった。ありがと」
「あんまり優しくするなよ」
まっすーが、オイルを塗ってツヤツヤになった指をなぞりながら、唇を尖らせる。
「優しく？」
「高いとこから落っこちたら大怪我するでしょ。
そっちにその気はなくても、丸山さんはそうは思わないんじゃないのってこと」
「そうね、たしかに・・・でもアイツ冷たくされると喜んじゃうからなぁ」
「ふふふ、Aちゃんて可愛いのに結構ヒドイよね！あれだ、ギャップ萌え？みんなが夢中になるの、わかるわ」
「だから不用意に爆弾発言するのやめてくれる！・・・ほらもう、怖い〜」
まっすーがじとりと彼を睨む。当の本人は全く意に介してないけど！
「じゃあ、オレらは愛の巣へ戻りますか！」
「はぁ？おれの部屋だし。ちゃんとおじゃましまーすって言えよ」
「言う言う。なんでも言っちゃうよーん。おじゃしますでもハラショーでも！」
バカップルめ。なんだかんだ言って、超仲良しなんだから。
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作者名：Niina* | 作成日時：2023年7月22日 17時
