STAY WITH ME (ページ21)

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悪い女ページ21

小山さんはよく喋る、会話の上手なひとだった。

「うわ、もうこんな時間。すいません、遅くまで・・・あの、帰る前にトイレ借りてもいい？」

時計を見ると１１時半だ。ワインは１本空いた。

「うん、玄関前を左・・・そう、そっち」

小山さんの姿が見えなくなると、空気の色が変わった。

ずっと右隣にあったシゲアキの体温を、ぐっと強く感じる。

ほんの少し指を動かしただけで、シゲアキの左手に包み込まれた。

ドキドキする。体の芯が疼く。

「帰っちゃう？」

「小山がいるしな」

吸い込まれそう。まあるい黒目が私の姿を取り込むかのように、じっと見つめている。

キスしたい・・・

「ごめんごめん、おまたせー！」

あと３センチ、というところで小山さんがバタバタとトイレから出てくる。

ちっ、空気読めよ！

くくくっとシゲアキが小さく笑って、私の手をそっと離しながら立ち上がった。

「帰るか。俺、明日からジャカルタだわ」

シゲアキの手がぽん、と頭を撫でる。

「ジャカルタってどこだっけ」

「インドネシアの首都」

荷物を持った２人を玄関まで見送った。

「ごちそうさまでしたー。長居しちゃってごめんね」

「ううん、楽しかった。

ねえ、小山さん、ちょっとだけ、あっち向いてて？」

にっこりと笑いかけると、小山さんはピシッと一瞬固まって、くるりと回れ右をする。