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悪い女 ページ12
何事か打ち込んで、シゲアキがスマホを帯に挟み込んだ。
「そっちにも来てない？」
「来てたけど、気持ち悪くなったからひとりで帰るって言っておいた」
ふーーー、と長く息を吐き、彼の利き手がまたぎゅっと握りしめてくる。
よくよく考えると、ひどい話。
お互い恋人がいるのに、そんなこと省みもせずに溺れるように抱き合って。こんなふうに、今、指を絡めてる。人として最低。わかってる。
だけど、止められなかったし、やめる気もない。たぶん、シゲアキも同じことを考えているような気がする。
車内に沈黙が落ちる。
まっすぐ前を向いたままで、シゲアキがぽつりと喋った。
「あのさ、元カレ？と話するとき、俺も呼んでよ」
「え？」
「２、３発くらい殴られる覚悟はできてる。
あと、あいつには俺が話すから、２人だけで話しないで」
「じゃあ、私も呼んでよ」
振り向いた彼は苦笑を浮かべた。
「うーん、それはどうかな。逆効果じゃね？あいつ、何するかわかんないぜ」
「でしょ。シゲアキが刺されたら困るもの」
「刺さ・・・れないように気をつけるしかねーな」
タクシーが見慣れた通りに入ったから、大通りから少し奥まった場所にあるマンションの前へと停めてもらう。
「ここ？」
ぽかんと口を開けたまま、シゲアキが天を仰いだ。
「そうよ。私のお城」
オートロックを解除しようとしたら先に開いた。出てきた男の子と目が合う。
「おー、A。おはよー」
「あ、まっすー、おはよう。いいところに来た！お洋服見せて」
「はぁ？朝からなんだよ」
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作者名：Niina* | 作成日時：2023年7月22日 17時
