STAY WITH ME (ページ11)

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悪い女ページ11

「知ってるよ。会ったことはなかったけど」

会う？『見たこと』ではなくて？？

「そういえばシゲアキって何の仕事してるの？」

今さらな質問。私たちはお互いのことを何も知らない。

だけど、それが不安かと言えば、そうでもない。友だちの彼氏だっていう、妙な品質保証感があるからかもしれない。

「カメラマン。テレビのな」

彼が担当する番組は世界のミステリーを紹介する老舗の番組だった。

「あいつから聞いてない？」

「聞いた、かもしれない・・・ごめん、覚えてない」

「や、そんなもんだろ」

シゲアキがピクッと体を強張らせた。帯に挟んだスマホが震えながら光っている。

「ああ、来た」

彼の手の中で浮かび上がるメッセージ。

右手だけでたどたどしく画面をタップしているから、繋いだ手をちょっと持ち上げた。

「ありがと」

シゲアキは左利きだった。

右手は彼の右手に包まれて、彼の左手はスラスラと文章を連ねていく。

「何て言ったの？」

昨日のタクシーの中でも、彼はメッセージを送っていたはずだ。

「先輩の代わりで急に仕事行かなきゃならなくなったって。滅多にないけど、ま、たまーにはあるんだわ、そういうことが」

目の端で、瞬時に返信がきているのが見えた。