【一次創作】たまうさ牧場の平和な日々 (ページ11)

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萌(もえ)さんはかなり気の強い性格らしかった。私の事が気に入らないのか、睨みながら文句を言ったりしてくる事もあった。

　けれど巻物を読んでいると、萌(もえ)さんが私に当たりの強い理由が何となく分かった。

　萌(もえ)さんの生まれである蓬莱島(よもぎがしま)は、尊い方々のために尽くす一族らしかった。萌(もえ)さん自身も尊い方々のためにいろんな修練をしているようで、いつも難しい巻物を読んでいたり、何かの小物を作ったりしていた。そんな一族だから、ぽっと出の私が許せないんだろう。

　私は巻物を閉じる。いつの間にか膝の上に乗ってきていたたまうさをおろした。この建物にもたまうさが放し飼いにされているようで、たまにこの部屋に入ってきてはじゃれついてくるのだ。

「たまうさ、今は遊べないの」

「たま〜？」

　たまうさは不思議そうにしていたけれど、向こうへ行ってほしいと言ったのが分かったのか、ちょっと悲しそうにしていた。

「開耶(さくや)〜？」

　部屋の入り口の方から声がした。萌(もえ)さんの声じゃない。阿月(あづき)様の声だ。振り向くと、やっぱり阿月(あづき)様。そのすぐ後ろには萌(もえ)さんが侍っている。

「は、はい！」

「萌(もえ)からも聞いてるでしょうけど、尊い方々への奉仕、しましょう？」

「ほ、奉仕ですか？でも、何を……」

「だーいじょーぶー。簡単なやつ……たまうさを何匹か尊い方々へ持っていくだけよ」

　よく分からなかったけれど、阿月(あづき)様に促されるままに立ち上がって廊下を歩く。そんな私の事が気になるのか、さっきまで膝に乗ってきていたたまうさがぽよぽよ跳ねてついてこようとした。

「あら、ちょうどいいわね。その子も連れてきてちょうだい」

「はい。たまうさ、おいで」

「たまー」