【npl】鉢合わせ【8】 (ページ37)

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起きて、と脳内に語り掛けるような、優しい口調で体を揺さぶられる。

ゆっくり目を開けると、寝癖がついている彼がこちらを見詰めている。

私「 … おはよ、はっち。」

彼は涙ボクロを触るように、目元にかかった前髪を上げ、御早うと囁くように返す。

彼は上裸をぐっと起こし、髪をくしゃくしゃ触りながら、オッサンの様な大きな溜息をつく。

八野「 … 起きれる？」

何かを心配するように手を差し伸べられるも、寝起きはいいんで！と自慢げに言い、腹筋に力を入れる。

ずきり。

腰部に雷でも走ったかのように、異常な程の激痛が刺激し、情けない悲鳴と共に再度ベッドに倒れ込む。

八野「俺の自制心が残ってれば … 」

彼は両手で顔を覆い、ぶつぶつ反省の意を唱える。

私「 … 責任、取ってください」

その言葉を聞いた彼は両手を下げてカァッと赤面させ、鯉のように口をぱくぱくさせる。

八野「その台詞 … なんか、あの、…、うん、いや何でもないです、ハイ。ご飯食べましょ。」

彼は私の体を支えながらリビングまで擁護してくれて、足腰の悪いおばあちゃんになった気分だ。

座椅子に座り、ぐったりしていると、香ばしい匂いと共にホットコーヒーを持ってきてくれた。

八野「無理しないでね」

私「 … 無理させたのは誰だろうなあ」

向かいの席に座る彼を横目に、コーヒーを啜る。

八野「ゴメンナサイ」

猫舌にも優しい、丁度良い温度加減の美味しいコーヒーを淹れてもらったし、まあ許してあげようかな。

なんて声に出さないけれど、そんな思いを胸に秘め、意地悪く許さないよと微笑む。