【npl】鉢合わせ【8】 (ページ21)

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上手い具合に言葉が出てこない。

緊張すると頭が真っ白になるって本当なんだな。

本当はこういう所が魅力的で惹かれた、とか。

お前のこの仕草がいちいち可愛い、とか。

出会いの話を混ぜても尚良かったのかもしれない。

けど、そんな事を考える余裕も無ければ間もない。

八野「 … … 好き、です。田部井さんのことが。高校の頃からずっと。 … 付き合ってください … 。」

フラれたらナポ男の皆に飯でも奢って慰めてもらおう。シアトルでいい土産も買ってやろう。

緊張で本音を言えば田部井さんの視線から逃れたかったが、何でだろう、目が離せなかった。

彼女は俺の言葉を聞くと目を細めてほくそ笑んだ。

田部井「 … はい、よろしくお願いします。」

予想外の答えに声が出ない。

え？今 … よろしくって … ？

八野「ほ、ホント？揶揄いとかじゃなくて？俺なんかと付き合うなんて … 」

田部井「卑下し過ぎですって … それに聞いたでしょ、惚れてたって。」

ふふっとあざとく笑うもんだからまた深く彼女に溺れてしまう。

八野「 … … … だ、抱き締めていい？」

何を言えばいいかわからず、ぼろぼろ欲ばかりが口から漏れていく。

彼女はどうぞ！と少し俺に近付く。

田部井さんをゆっくり抱擁すると、俺の背中に彼女の腕が回される。

夢見心地──或いは幸せである。

相手から伝わる温もりがそれを示す。若しくは占めす、だ。

こんな落語のように掛詞を考えるほど冷静になってきたものの、どうしてもまだ相手の温かみを感じていたくて、頬を擦り寄せてみたり髪を梳いて撫でたりと。

八野「 … もう一つ、いい？」