【npl】鉢合わせ【8】 (ページ3)

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確かあの日は雲一つ無い、綺麗な星空が見れる晩の事だった。

沸騰音が耳から脳へ伝わると、焜炉の火を消し湯をマグカップに注ぐ。

相変わらずこの深夜帯に自宅で飲むブラックは苦手で仕方ないが、仕事を片付けきれてない以上寝ることは許されない。

ベランダに裸足で出ると、反射的に寒っと声に出す。

昼間の丁度いい気温とは打って変わって、今は体の芯から凍える程外は冷え切っている。

眠気覚ましにはもってこいの寒さだが、出来ることなら早めに布団に潜り込みたい。

こうして家で物事を考えていると、どうしてもネガティブ思考の波に呑まれ、死にたい云々を考える悪い癖がでる。

そろそろパソコンに向かわないとな、何て思いつつも呑気に空を見上げてみた。

これは見てわかる、オリオン座だ…あれは何だ？…って飛行機か。紛らわしい。

珈琲を口にすることも忘れ天体を見ていると、向かいのベランダの扉が開き、一人の女性がラフな格好で出てきた。

別に挨拶何て堅苦しい事はしないだろうし、何よりも俺は仕事がある。駄弁なんて有り得ないだろ。

「あれ、八野先輩！」

綺麗に透き通った明るい声が俺の脳を刺激した。

「 …え？」

思わず彼女の方へ向き合わせると、何とも見え覚えのある女性が。

「田部井です、覚えて…ます？」

人と話す時緊張してると手を擦り合わせる癖、何より涙ボクロが彼女を田部井さんだと確信した。

「 …うそ、だろ」

こんな出会いがあるなんて。

「昨日引越したばかりなんですよ！宜しくお願いしますね」

壁で見えない右手で小さくガッツポーズを作った。