【ナ⌒ポ⌒リ】彩り緑【短篇集】 (ページ7)

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奪え、愛ページ7

高校生同年代
はっち=鉢屋
しゅー3=秀
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Aは秀さんとそろそろ1年目を迎えようとしてる。…何がって？わかるだろ、お付き合いだ。

そしてそんなAは今にも泣きそうな顔で窓際の椅子に座っている。さて、どうしたもんか。まあ、順を追って説明しようか。

Aと秀さんが付き合って1ヵ月が経ったとある放課後。Aは口元を綻ばせながら俺の元に来た。

何かと思って話を聞いたら、反吐が出そうなほどの甘ったるい惚気話。その日からそれを聞かされるために、俺たちは週に三度、放課後の空いた教室に集まる。当の秀さんは居ない。犠牲になるのは俺のみ。

しかし10ヶ月が経つと、Aの惚気話が減っていき、ただただ最近あった出来事などたわいない話をするようになった。自分から聞くなんて気でも狂ったと思ったが、

「秀さんとはどう？」

実は振って欲しかったのか、なんて予想し聞いてみる。あの時のAの顔と言ったら、嫌いな食べ物を無理矢理頬張ってるような、そんな辛い表情をしてた。え？わかりにくい？うるせえ。

Aは答えた。“秀くん、私以外の人とも遊ぶの”と。嫉妬、なんて話じゃない。秀さんは所謂遊び人だった。付き合ってても他の女性を見てニヤニヤするような、ボディタッチも簡単にするような、そんな人。

時間は戻って今。秀さんが別の女性と二人きりで出掛けて行くのをたまたま見てしまったらしい。高校生にもなって普通の恋愛が出来ないなんて、あいつもある意味大人になったなあなんて呑気に思う。その反面、チャンスだと確信した。

涙で満たした瞳を向ける無垢な彼女の横に行き、距離を詰めて椅子に座る。辛かったね、と慰めると初めてAは俺の前で涙を流した。

淋しい思いをさせた秀さんに返したくねえな。

Aの涙を隠すように、俺の胸を貸してあげた。彼女は“鉢屋くんありがと”と背中に腕を回して静かに泣いていた。