【ナ⌒ポ⌒リ】彩り緑【短篇集】 (ページ15)

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忍びの者ページ15

はっち→貴方に仕える忍。狼と呼ぶ。
ｾｷﾛモチーフだが原作とは全く異なる話
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高槻山の麓に建つ寝殿造りの寺。そこから見える景色というのは絶景である。紅葉の鮮やかな色彩。金木犀の仄かな香り。水面に落ちた葉の一枚一枚がまた新たな景色を生み出す。囁くように歌うモズの鳴き声はこの家屋の音楽である。

茶柱の浮いた温かい緑茶を啜り、牡丹餅を一口齧る。甘い。体が癒えてくる甘さである。

ふと木々が微かに音を鳴らした。大した風も吹いていないというのに。しかし私は気にせず二口目に進む。美味い。とても。

その数分後のことである。障子がゆっくりと横に移動し、風が音を立てて部屋に入り、和の匂いが微かに香る。

「御子様。」

一本に髪を縛り、光のない瞳を此方に向け、首元の布をボロボロにしたまま障子を閉める。

「疲れたであろう、おはぎはどうだ」

私は皿に乗せてあったおはぎを差し出す。一度渋ったが、右手に装備していた手甲を外し、静かに齧る。珍しく綻んでいた。

「おはぎは…」

と言いかけた時、目付きを変え忍刀を構える。私を庇うように周りを見回し警戒している様子であった。

その刹那、キンと刀がぶつかる音。思わず声を上げてしまうも、この者がいるから大丈夫だと無理に落ち着こうと努力する。無論、無駄である。

「御子様、お下がりください。」

狼は袖から手裏剣を投げ、その隙に私を抱え、庭園まで鈎縄で逃がしてくれる。しかし狼の背後には既に敵が狼の命を狙っていたのである。不幸中の幸い、敵は一人らしい。

と言っても矢張り強い。旋風斬りなんて言う、大胆に回転をして広範囲を斬り付ける技を巧みに操る。狼も中々に苦戦している。重い一撃を刀で受けると、体幹が崩れ、蹴りを喰らう。

不意打ち。敵の忍は気付けば私の背後に回り、苦無を構え、心臓目掛けて振り下ろしたのだ。

忍の殺意で漲った充血された瞳が鮮明に映るも、誰かの手が私の視界を覆い、それと同時に鈍い音が聞こえた。

何も聞こえなくなると視界が明るくなり、狼が眉を下げて此方を覗き込んだ。

「…怪我は。」

「無いぞ、有難う」

その言葉を伝えると心底安心したように胸を撫で下ろした。一見冷徹な顔の忍だが、こうして常に私を身を呈して護ってくれる。

「おはぎ…美味しかったです。」

「そうであろう、私の手作りなのだからな」

「…んはは、だからですね。」

この忍はよく笑うのである。忍にはあまり似つかわしくないのではと疑う程に。