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束縛 ページ13

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キィと鉄製の扉が開き、明るい光が対照的な暗闇の部屋に射し込む。俺はそのまま扉を閉めて施錠し、小さなデスクライトの電源をONにする。

淡い光を浴びて顔を出すのはA。以前に比べてクマが増え、髪も伸びた気がするけど、俺が来る度に微笑むあの表情は変わってない。


「またあの三人に会いたいなあ」

屋根から雨水が滴る様に、或いは蝋燭の火がふと消える様に、彼女は突然小さく呟いた。それを聞き逃さなかった。否、聞き逃してはいけない。

「…何で?俺がいるからいいでしょ」

「でも、流石に仕事以外の外出を制限されると寂しいよ?」

何、それ。そもそも俺は外出だとか寂しさの話なんてしてないんだけど。“あの三人”はお前にとってどんな存在なんだ?“特別”だとか言ってみろ。俺はすぐに該当するアイツらを…

「はっち?」

透き通る声が脳に届く。…いけない、取り乱しては。

「…ドーナツ作ったんだ、食べようか」

最近レシピを覚えたシュガードーナツ。出来は良く、甘い物好きのAもきっと気に入ってくれるだろう。

俺はドーナツを一つ手に取り、Aの口まで運ぶ。恥ずかしそうに頬を赤く染めながらも、躊躇いつつ口を開ける。

「ん、おいひい」

「んふふふ…そう?もっと食べて」


Aは俺にも一つ分けてくれて、気付けば平らげていた。あんな小さな体でもあの量を食べれるんだなあ。にしてもホントAが居るだけで幸せを感じられる。一生離したくないし、他の人間にも極力関わらせたくない。俺だけのAでいて欲しい。

「どうしたの?」

ああ、俺を見てる。俺だけを見てる。堪らなくて堪らなくておかしくなりそう。ちょっとぐらい触れてもいいよな。うん、大丈夫、だって付き合ってるし。

気付けば彼女の唇に自身の唇を重ねていた。甘くて蕩けそう。Aの舌は温かくて、甘過ぎて、脳を麻痺させる。つうと指を立てて背中を触ると、俺の体を強く抱く。そうそう、そのまま離れなきゃいい。

「俺から離れたら✕すから…」

Aの首元に何度もキスの跡を付ける。その度に体が跳ね上がり、鼻にかかった甘ったるい声で啼く。

「はっ、ち、明日休みじゃないから…」

クイッと俺の胸部を押すも、今夜は離す気なんてサラッサラ無かった。寧ろ尚一層彼女に密着する。

「仕事なんて休めよ」

Aは不満げな顔でばかと返したが、そんなの今じゃ唆られる材料の一つだ。…いい加減鳥籠に入れることも視野に入れるべきだなあ。

熱→←酔い好い宵



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作者名: | 作成日時:2019年5月17日 0時

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