赤色のミサンガ 3 (ページ10)

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　ぽろりぽろりと次々零れ落ちる涙がレースカーテンから柔らかく差し込む陽の光を反射するさまが宝石のようにきれいで、自然と視線が目元に吸い寄せられる。きらきらしているものが好きだと、本人まできらきら輝くようになるのだろうか。俺にじっと見つめられていることに気づいたらしいAも此方を向いてぱちりと瞬きをした。その拍子にまたぽろりと落ちかけた水滴を唇で受け止める。そのまま目元や頬にキスを繰り返すと、Aが擽ったそうに笑った。いつもの調子が戻ってきつつあるようだ。雨上がりの清々しさと名残惜しさのようなものが混じり合う。

｢Aは、涙まできれいなんだな｣
｢？泣き顔はあんまり可愛くないよ｣
｢どんな顔をしていてもかわいい｣
｢えーさすがにそれはない｣
｢昨日の疲れ果てた顔も可愛かった｣
｢……できれば忘れて欲しいんだけど｣
｢なら無茶をしないことだな｣

　Aが可愛くないなどと有り得ないことを言うので話が盛大にズレた。だが、他人の前で涙を見せないAが泣くのはきっと俺の前だけだから、Aの涙の美しさは俺だけが知っていればいい。
　A自身も気づいていないようなAの魅力を独占できるのだから、結婚とはいいものである。

｢人魚の涙は宝石になるらしい｣
｢唐突だね｣
｢Aは人魚なのかもしれない｣
｢修也くん、わたしの風邪移った？｣

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