ダイエットの攻防。 ページ21
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｢修也くん、わたしダイエットする！｣
｢………………は？｣
Aによる突然の宣言に、図らずも固まってしまった。……たっぷり時間をかけて事態を把握した頭が現実逃避をしようとしているが、まずはメラメラとやる気に満ち溢れる奥さんに事の次第を聞いてみることにする。
｢どうして急に？｣
｢なんか太った気がするから｣
至極単純な返答に頭を抱えた。そもそもAは元が痩せすぎなのだ。学生時代の半拒食状態が尾を引いているらしく、一度に食べる量が少なすぎてまるで猫の餌だとお義母さんからも心配されている。Aの大好物が多い季節だからここぞとばかりに色々食べさせまくっていたが、まさかこれまで気にも留めていない様子だった体型を気にするようになるとは……大きな誤算だ。
部屋着をぺらっと捲り自分のお腹の肉を摘もうとするAを止め、昼寝の名残りで跳ねた寝癖頭を撫でる。
｢……具体的には何をするつもりなんだ？｣
｢食べる量を減らす｣
｢ダメだ｣
｢えー｣
一番楽なのに、と文句を垂れる口をキスで塞いでやった。食べる量が少なすぎて(本人の知らぬ間に)家族会議で問題になっている今、よりにもよって一番避けたい選択肢を取ろうとするな。
｢もっとあるだろう、運動量を増やすとか｣
｢動きたくなーい｣
そうだった、Aは生粋の面倒臭がりだった。俺の上でぐてーっと伸びる柔らかい身体を囲うように抱きしめる。
｢そもそもダイエットの必要はないと俺は思うが｣
｢お気に入りのお洋服着れなくなったら嫌だから、ちゃんと対策したいの｣
｢……｣
相変わらず好きなことに対しては他を押し退けるほどに一直線だ。ここまで心が決まっていると俺にそれを曲げることはできない。別の方法で何とかしなければ。
こうして、毎年春恒例俺とAのダイエットの攻防が始まったのだった。
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年11月8日 13時
