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｢なんでおまえはそんなにかわいいんだ？｣
額にキスをして動き回った故の寝癖頭をよしよしと撫でると、ふんわりと口元が緩む。Aに触れるときの力加減にも随分慣れた。彼女が目を覚まさないのが何よりの証拠だ。
しばらく寝顔を堪能していると、Aはくっついていた俺の身体によじ登り始めた。朝起きると何故かいつもAが身体の上を陣取っているが、毎晩こうして頑張って登っていたのか。かわいい。
時間をかけて登りきり、寝心地の好い場所を探すようにもぞもぞ動く。やがて満足する寝床を発見したのか、すり、と胸板に頬を寄せ動かなくなった。
｢……｣
また可愛いと言ってしまいそうになる口を抑えつけて堪える。Aの睡眠を妨害するわけにはいかない。俺は妨害されているが。
触れていたくてそっと華奢な背中に手を添えると、その温かさに鼻の奥がつんとした。Aがそばにいることが当たり前の生活を、その温もりに触れることで噛み締める。これまで色々なことがあった。好きなことをしているからといって良いことばかりではない。しかし、良いこともそうでないこともすべてに意味があるのだと思えるのは、ひとえに彼女の存在があるからだ。
俺が生涯を掛けて愛し、庇護し、慈しむかよわくて繊細な生き物。心も身体もそんなに強くないくせに時折妙に図太く強かで、どんなときも俺の一番の味方で、初めて出会ったあの日から俺の心を惹き付けてやまない、そんなひと。
｢しゅうやくん｣
｢ん？｣
｢すき｣
｢……｣
どうだ、俺の奥さんは可愛いだろう。譲ってやらないぞ。
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年11月8日 13時
