赤色のミサンガ 3 (ページ16)

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　Aに対する恋心を自覚してからは、サッカーを頑なに見つめていた頃より彼女の心を近く感じるようになった。東京と福岡(Aがカナダにいたこともある)、物理的な距離は相変わらず離れているのに。これまで気にも留めていなかったチョコレートに思いを馳せているのはその一例だ。これまで知らなかったことだが、恋というのは人の視界や感覚を鮮明にすることもあるらしい。

　……いつかAのそばで生きられる日が来たら、誕生日以外でも薔薇の花束を贈りたい。そんなことを想いながら、彼女がくれた小さな赤薔薇を舌に溶かした。

｢……あまい｣

◇

　頬に温かい何かが触れる感触でゆっくり意識が浮上する。

｢ん……｣
｢おはよ、修也くん｣

　寝起きの視界にいつも通りのAの姿が映った。

｢おはよう、早起きだな｣
｢修也くんは珍しくわたしより寝坊助だね｣
｢……何だか、懐かしい夢を見た気がする｣

　華奢な肢体をぎゅうと腕の中に閉じ込めると、柔い温もりがじんわりと全身に広がるような心地がする。当然のように背中に回る腕があまりに愛おしくて、つむじにキスを落とした。鼻をくすぐるにおいは、この身を沸き立たせ、それでいてほっと落ち着かせてくれる彼女自身のものだ。

｢A｣
｢なあに？｣

　此方を甘やかすようなやさしい声に、心ごと委ねる。

｢……ずっと好きでいてくれて、ありがとう｣

　Aは俺の唐突の言にぱちりと双眸を瞬かせ、やがてふんわりと笑ってみせた。

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