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｢修也くんの手、おっきくてやさしくて好き｣
言葉とは裏腹に恨めしげに此方を見るAの額に自分のそれをくっつけると、今度は如何に俺の体温が好きなのかを語った。
｢怖いか｣
｢こわい｣
｢嫌か｣
｢いやじゃない……こわいのきらいなのに｣
何も行動しなくとも周囲の人々から蝶よ花よと全肯定されて生きてきたAは、愛されることには慣れていても、愛することには慣れていない。それ故に自分の中で育つ覚えのない感情が恐ろしいのだろう。ただの恋で終われたなら、Aはきっとこんな思いをすることはなかった。しかし、愛する妻がようやく自覚した少々大きすぎる愛情に華やぐ心を隠せない。両手で頬を包み、此方から逸らそうとする顔を上げさせる。視線がかち合い、キャパオーバーで涙目になったAの引き結ばれた唇に俺のそれを押し付けた。短いキスだったが触れている頬が熱くなったのを本人も分かっているようで、俺の懐に隠す。Aの方から俺にくっついてくるのは随分久しぶりな気がして、離れていかないように強く抱き竦めた。
｢すき｣
｢俺も好きだ｣
｢たぶんわたしの方がもっとすき｣
くぐもった小さな声に思わず笑みが零れた。
｢おまえを愛しすぎて他の何も勝てないから、愛くらいは勝たせてくれてもいいんじゃないか｣
華奢な身体を横抱きにして立ち上がり、おとぎ話が好きなAのためにくるりとその場で回ってみせる。
｢俺はおまえとずっと触れ合っていないと落ち着かないんだ｣
｢……わたしが触れてこないから、落ち着かなかった？｣
普段ほどの覇気はないがいたずらっぽく笑う小悪魔に、先程よりも強引にキスをした。
◇
｢……というわけで、今日も俺のAが世界一可愛い｣
｢豪炎寺さんほど愛妻家って言葉が似合う人を他に見たことないですよ｣
惚気話に付き合わされた虎丸が、やれやれとわざとらしく溜息をつく。
｢Aの存在は俺の生きがいなんだ｣
｢幸せそうで何よりです｣
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年11月8日 13時
