愛妻家の悩み。 ページ13
2024.1.31 愛妻家の日
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俺には悩みがある。というのも、最近Aの様子がおかしいのだ。いつも雛鳥のように俺にくっついて回り、家の中では片時もそばから離れないはずなのに、不自然に距離を取られることが増えた。
俺がAに何かした？Aが嫌がることをするわけがないだろう……と言いたいところだが、何か不愉快なことがあったのかもしれない。俺の愛が重くて嫌になった？……それは盲点だった。
本人に聞いてみたいところだが、あまり強引に迫るとAが逃げてしまうので、タイミングが掴めない。今もソファーに一緒に座っているが、微妙に間が空いている。どうしたものかと悩んでいると、突如として右半身に衝撃を受け、愛しい温もりがじんわりと広がった。
｢A？｣
｢しゅうやく、む、虫……｣
声にならない悲鳴をあげてしがみつかれ、若干の高揚感に見て見ぬふりをしながらAの視線の先に目を向ける。そこには、よじよじとソファーを登っている小さな蜘蛛がいた。家の中によく出る蜘蛛は益虫なのだが、Aの様子を見る限り逃がした方が良さそうだ。ようやく感じられた温もりを名残惜しく思いながらAのそばを離れ、近くにあった紙で蜘蛛を掬い上げる。窓の外に放してやってからソファーに戻ると、安心感でいつもの癖が出たらしいAが手を伸ばしてきたので、抱き上げて膝に乗せた。
｢そろそろ聞かせてもらってもいいか？｣
｢ん？……あ｣
距離を取っていたことを思い出した途端に離れようとする温もりを柔く抱き締める。力なんて殆ど入れていないのに、か弱いAは簡単に動けなくなった。
暫く気まずそうに視線をさ迷わせていたが、やがてぽつりぽつりと話し出す。
｢修也くんがとてつもなくかっこいいことに気付いちゃったの｣
抵抗をやめておとなしくなったAがしゅん、と眉を下げた。
｢ただでさえ大好きなのに、どんどん好きなところが増えるから｣
｢怖くなったか？｣
｢……ちょっとだけ｣
何と言っていいか分からないが、とにかくAがとてつもなく可愛いことを言っているのは分かったのでよしよしと頭を撫で回すと、そういうの！！と彼女にしては珍しく大きな声を上げる。
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年11月8日 13時
