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わたしはこれまで、真に生きることができてはいなかったのかもしれない。修也くんがこの居場所を造ってくれたから、辛うじて繋ぎ止められていた気さえする。
｢だめだなぁ、わたしは｣
｢……何がだめなんだ？｣
｢わ、びっくりした｣
修也くんも目が覚めたらしい。それでも普段より早い時間だからか、目が眠そうだ。額にキスを落とされる擽ったさが消えないうちに、もう一度抱き込まれた。
｢今日は早いお目覚めだな｣
｢夢を見たからかなぁ｣
｢夢？｣
｢わたしは修也くんがいるから生きていられるんだなって、実感する夢｣
｢なんだそれは｣
くつくつと笑い和らぐ目元が、いつも見ているはずなのにいつも以上に愛おしい。
｢おまえがだめだというのにも関係があるのか｣
｢まあ、そんなところ｣
｢おまえは生きているだけでえらいのに｣
｢甘やかしだ〜｣
｢俺は事実を言っているだけだ。おまえがそばにいれば、俺は常に幸せを感じられるからな｣
何気ない普段通りの口説き文句に、鼻の奥がつんとした。
｢……じゃあ、長生きしないとね｣
｢ああ、頼むぞ｣
どんなに不格好でも、苦しむことになったとしても、地を這ってでも生きてやろうと思った。生きてさえいれば、修也くんをあのような冷たい世界で独りぼっちにしなくて済む。手を伸ばせば温もりを確かめられる場所で、少しでも長く修也くんの人生に寄り添っていたいと思った。
きっとこれこそが、あの頃の修也くんのように泥だらけで、それでいて一番星のように輝いているわたしの愛なのだ。
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年11月8日 13時
