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｢どうした？｣
｢だいすきだなって思った｣
｢……そうか｣
再びせり上がってきた本能をぐっと堪える。可愛さに理性を焼かれそうになるのは何度目だろう。頼むから今可愛いことを言わないで欲しい。俺はAを宝物のように大事にしたいのだ。
衝撃がないように細心の注意を払い、先程のブランコに彼女をもう一度座らせた。目の前に跪き、濡れた白魚のような足を持ってきていたタオルでやさしく拭う。
｢用意周到だね｣
｢Aが暴走して海に飛び込んでも何とかなるようにな｣
｢暴走なんてしませんー｣
ぷうと頬を膨らませるのすら可愛い。天然なのか計算なのか、Aが可愛いことしかしないのには困ったものだ。そんな悶々とした心を持て余す俺に気付くことなく、彼女は景色に目を向けた。
｢夕焼けが綺麗！｣
彼女の言葉に、もうそんな時間かと同じ方向に視線を移す。赤と橙のグラデーションに染められた空と雲がまるで一枚の絵画のようで、計らずも見入ってしまった。思い返してみれば、中学生の頃、部活帰りにAや円堂たちと共に見た夕焼けはいつだって綺麗だった。忙しなく過ぎる時間の中で、いつしか俺は景色を楽しむことを忘れていたのか。
彼女の方に視線を戻すと、鮮やかな橙が混じったまるい眸が笑みを浮かべた。
｢修也くん、追いかけっこしようよ｣
｢追いかけっこ？｣
｢浜辺で好きな人とするの、夢だったんだよねー｣
そんなことを言われてはしない訳にはいかない。
｢鬼は俺か｣
｢うん、十数えて｣
｢捕まえたらキスしていいか｣
｢いいよ！｣
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年1月31日 1時
