恋と愛の狭間。 ページ32
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Aと籍を入れてから数日。今日は雷門中に来た。過酷なホーリーロード決勝を戦い抜いたサッカー部に会うためだ。円堂と鬼道と三人で並んでフィールドを駆ける選手たちを見ていると、十年前の雷門中サッカー部を思い出す。何年時が経っても雷門魂は変わることはなく、それが何にも換え難い宝だ。
｢ところで……豪炎寺｣
｢なんだ？鬼道｣
突然名を呼ばれ其方を向くと、鬼道の目線は俺の左手にあった。
｢おまえ、俺たちに話すことがあるだろう｣
｢ああ……｣
目線の意味に気づき、左手を持ち上げる。薬指に鎮座する輝きに、円堂も鬼道の言いたいことが分かったらしい。分かりやすく表情が明るくなった。
｢豪炎寺、それ……！｣
｢ああ、結婚したんだ｣
｢いつ！？｣
｢二日前｣
｢言うのが遅い！｣
｢すまない｣
大興奮の円堂と穏やかな微笑みを浮かべる鬼道の視線に晒され、急に照れくさくなる。
｢相手は譲葉か？｣
｢！よく分かったな｣
｢女っ気のないおまえが急に結婚するといえば、あいつ以外有り得ないだろう。まさか交際すらせずに結婚に踏み込むとは思わなかったが｣
鬼道の言葉に思わず苦笑が漏れた。あわよくば同棲したいという欲はあったものの、俺も当初はここまで焦って突き進もうとは思っていなかったのだ。外堀は高校時代から積み重ねた結果ほぼ完璧で、焦る必要など微塵もなかったと言える。むしろ、何年も待たせた分Aの心に合わせて距離を縮め、彼女が世界一幸せだと思えるようにしようと考えていた。しかし、そんな計画も実際にAの顔を見たら見事にすべて吹き飛んでしまう。この二年間帰りを待つ人が居なかった自宅にAがいるという事実だけで脳が焼けるかと思った。彼女を閉じ込めて二度と外に出したくないとすら思った。だからプロポーズした。愛しさが止まらないとはこのこと。
……ここまで話すと、鬼道と円堂からは何とも言えない眼差しを向けられた。
｢豪炎寺おまえ……｣
｢前から思ってたけど、やることが一々極端だよなぁ｣
我ながら暴走をしていた自覚はあるので、咳払いで誤魔化す。自覚はあれど、反省も後悔もしていない。恋心を伝えるのとプロポーズとで順番が逆になってしまっただけである。夫婦での生活が唐突に始まり、現在家では(主にAが)距離感をはかりかねているが、永遠にこの腕に囲い込めたのだから何の問題もない。
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年1月31日 1時
