俺の妻が今日も可愛い話。 ページ4
.
ようやくこの手に俺の最愛が帰ってきた。まさに歓天喜地である。俺はこの日のためにAの顔すら見れない地獄に等しい日々を耐え抜いた。数ヶ月前にこっそり撮影した彼女の寝顔で癒しを何とか補給しながら触れられないもどかしさを乗り越えた。一昨日久々に顔を合わせたAはどこか窶れていて身体も弱り切っていたが、段々と元通りになりつつある。心配で眠れなかった寂しい独り寝の夜ともお別れだ。
｢Aと過ごせぬ日々よ、さらば｣
｢時代劇かな｣
絶妙なタイミングでツッコミを入れてくる天使の頬にキスをした。もちもちだ。かわいい。約一週間浴びていなかった圧倒的な可愛らしさに全身が打ち震える。
｢……かわいい、死にそうだ｣
｢そんなに？｣
｢おまえほど可愛い生き物はそういない｣
そもそも、俺が人生で心の底から可愛いと思ったのは妹である夕香と此処に御座す天使だけだ。
｢それ外で言わないでね｣
｢仰せのままに｣
俺の天使は愛情深いが割と冷静なところもある。かわいい。
ひとつ欠伸をして膝の上でもぞもぞと方向転換した彼女は、寝床を探すように寄りかかってきた。数日ベッドの住人と化していた為か、元々ないに等しい体力が更に落ちてしまっているらしく、すぐ眠そうに目を擦る。かわいい。
それから一時間ほど天使の布団としての役割を粛々と果たした。いつも見ている写真の寝顔も可愛いが、やはり直接見るに限る。呼吸音や息遣い、表情の変化すら可愛くて愛おしくてたまらない。これが天使からのギフト。寝ぼけ眼のおまけ付き。彼女は日頃からまるで綿あめのように甘くて柔らかい雰囲気を纏っており、特に寝起きは雲上を歩いている錯覚を起こすほどにふわんふわんだ。ぼんやり此方に目を向けたもののまた瞼が閉じられた。二度寝か。あ、また開いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おひめ | 作成日時：2023年1月31日 1時
