春眠暁を覚えず。 ページ19
豪炎寺目線
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今日は何だかいつもと違う心地だ。身体から力が抜け切っているような、何も考えずに頭を空っぽにしておきたいような。そしてそれは我が妻も同じらしい。いつもなら喜んで洋服を吟味しているというのに、着替える気力も無さそうだった。眠そうに目を擦りながらふらふら歩くAを捕まえて引き寄せると、簡単に膝の上に収まる。
｢何もしたくない〜｣
｢キスは？｣
｢する｣
食い気味な回答に思わず笑みを零し、お望み通りちゅ、ちゅと何度か口付けた。実に満足そうな表情である。
｢一緒におやすみしよ｣
｢ああ｣
Aの肩と膝裏を支えて横抱きにすると、お姫様抱っこ！と喜ばれた。彼女は御伽噺のような恋に眸を輝かせる大変可愛らしい一面があるので、俺にできることは何でもすると結婚当初から決めている。かつては仲間内で朴念仁と言われることもあったが、今はそんなこともないだろう。すべてはAを俺の手元に縛り付けておくためだ。そのためなら白馬の王子様にだって、お姫様の前に跪く騎士にだってなれる。
ころんとベッドに転がったAの隣に滑り込むと、掛け布団を丁寧にかけてくれた。子どもにするように胸の辺りをとんとんとされ、おまけにねんねんころりよと子守唄を歌い出したので止める。
｢さすがに子守唄を歌われる年齢ではない｣
｢知ってる！｣
Aはあっさり歌うのを諦めてじゃれついてきた。ぎゅっと抱き締めると、俺よりも少々低い体温がじんわりと心を満たしていく。どうにもやる気は出ないけれど、彼女を腕の中に閉じ込めておけるのならこんな日も悪くはないと思えた。
｢宣誓〜本日わたしと修也くんはベッドから出ません！｣
｢誓うんだな｣
｢ん、修也くんが勝手に出て行こうとしたらお部屋に閉じ込めて外に出られないようにする。二度と陽の光は浴びれないと思ってね｣
愉快そうに笑う唇にキスをして、甘やかな二度寝を決め込んだ。春眠暁を覚えず、誰も文句は言うまい。
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年1月31日 1時
