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「きっと会えない人達を想って、命を投げ出したくなるときもある。けど、その人達を想い嘆くのは生きていないと出来ない」

言葉に、厚みがある。
握られた手に、酷く安心する。

萩原、松田、伊達。

景光。

彼等を、思い出さない日はない。

「託された命のバトンを、けして投げ出してはいけない。立ち止まっても、時は止まって共に嘆いてはくれない。一人で背負うのがとても辛くて苦しいのなら、誰かに共に背負ってもらえばいい」

「君が不幸を運ぶ? 死が訪れる? ふざけるな」

柊さんは僕の襟のボタンをとめて、ネクタイを締めて言った。

「人が不幸かどうかを決めるのは傲慢だよ。君が不幸だと決めつけた人間の中に、君と過ごせて幸せだと言う人間がいるだろう。私のように」

貴方はどうです? 風見さん。

柊さんは風見に投げ掛けた。
風見を見ると、彼は少し怒ったような顔をして居た。

「貴方の部下であることは、私の誇りです。貴方のもとで働けることも、日本を守れることも、私の幸せです」

「困難な壁が立ち塞がるのなら、私は助力します。荷が重いのなら、預かります。上司と部下というのは、一方通行な関係ではない筈です」

こんなにも、強い部下だった。

僕より年上で、優秀だがどこか抜けていて。
何度きちんとした飯を食えと説教をしたことか。それは、こんなにも強い部下だった。

「頼りないのなら、頼れるまでの部下になります」
「…充分だ。いつも頼ってるさ」

向上心を忘れず、指示をすれば応えてくれる部下に恵まれた僕は、幸せ者なのだろう。
こんなにも真っ直ぐに思いを伝えてくれる人間を、不幸だと決めつけていた自分の愚かさが身に滲みる。

「ありがとう風見」
「…いえ」

「貴方が運んだのは、幸福だ。死や不幸なんてものじゃない。死は誰にでも平等に訪れる。訪れるときが違うだけだ。だから、生きるというのは尊いんだ」

柊さんの声でそれが言われただけで、やるせなく思っていた気持ちが軽くなる。

「そして、理不尽に奪われる尊い命を無くすために今を生きるんじゃないのか?」

その通りだ。
この日本を蝕もうとする奴等の根を断つために、僕ら公安は命をとして戦っているんだ。

今を生きて(戦って)いくんだ。

「柊さん、ありがとう。僕は僕が守るべきものを守ります。ですから貴女も、貴女が守りたいものを…行ってください」

赤井が、来る頃だ。

「あぁ。またいつか」

僕は清々しい気持ちで、柊さんを見届けることが出来た。

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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時

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