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「…は、ぁ…ッ」

柊さんは畳の上で仰向けになって、腕で顔を上部を隠していた。苦しそうに呼吸を数十秒繰り返し、暫くして唇を強く噛み締めるのが見えた。

「今日はここまでです」

降谷さんは険しい顔つきを崩さない。
それほど、柊さんを危険な場所へ行かせなくないのだろう。

「赤井は、明日に此処へ来て、その後すぐにFBIに戻るそうです」
「…っ!!」

立ち上がろうとする柊さんは、もう自分で上体を起こせない。身体疲労が限界まで来ているのだ。
身体の向きを変えてうつ伏せになり、もがくことしか出来ていない。

それに、降谷さんに勝てる人なんて、この部署にもいないだろう。潜入捜査や凶悪犯の相手をしてきた人だ。踏んでいる場数が違う。

「…もう、一度……」
「貴女には無理です」

降谷さんがそういうと、柊さんは意識を手放した。

それを確認すると、降谷さんは柊さんの側へ歩みより、しゃがみこんだ。

瞬間、心配そうな眼差しでその頬に触れようとした降谷さんになにがおこったのか、俺の頭では理解が追い付かなかった。

「…な…降谷さん!」

即座に柊さんの腕を引いて手を離させる。
間違いなく、彼女は気を失っている。

けれどさっき一瞬の隙をついて、柊さんの腕だけが弾かれたように動いて、降谷さんの首を掴んだ。首は、一瞬掴まれただけなのに赤くなっている。

「まさか…気を失ってなお、僕を狙うとは…」

降谷さんは一つため息をついて、自分の首を触る。やれやれと言いたそうな顔だが、何故だろう。安堵したようなスッキリとした顔に見えた。

「…認めるしかないな。風見、明日動いてくれるか」
「はい。しかし何故…」
「…僕は立場上此処を離れられない。ただ、赤井には借りがある」

降谷さんは知っていたのだ。
降谷さんを狙ってくる輩を赤井捜査官が鎮圧していたこと。偽の情報をリークさせ、バーボンが日本警察の情報を盗む目的で警察庁にいると、降谷さんが此処を出られない口実を作ったこと。

「不本意ながら、奴が偽情報をリークさせてくれたお陰で僕は捜査を続けられる。…まぁ、向こうは貸しだなんて思っちゃいないだろうが。こんなものまで残していってくれた」

赤井捜査官が作成していたデータが入っているはずのUSBメモリ。白いそれは、赤井捜査官が持っていたために記憶に残っていた。

「偽のNOCリストだ」
「!」
「しかも、FBIにいる鼠の名前が入ってる。奴等の手で始末させる気だろうな」

恐ろしい男だよ、と降谷さんは笑った。

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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時

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