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地獄の3日間。
言葉にするならば、そう言うのが適切だろう。
降谷さんと俺で徹底して護身術とその他応用を叩き込んだ。
「最短で3日、長くても5日。その期間で、私に身を守る術を教えてくれ」
これが、柊さんの頼みごとだった。
何故そんな短期間で得ようとするのか。
彼女が身を守る術を欲するのは当然だ。
今回のようなことがあればなおさら。
最初、彼女は手も足も出なかった。
現役の警察官と一般女性。
その力と経験の差は明らかで、大体の人は此処で折れるのだ。自分には無理だと。
けれど、柊さんは違った。
力の差を理解した上で、何度も、何度でも向かってきた。こんなにも真剣な目をした女性は、初めてみたような気さえした。
護身術を教えていたはずが、あっという間に彼女が攻撃側になり、俺と互角の勝負を繰り広げるようになった。正直、あり得ない光景だった。
警察学校に入学し、鍛え上げてきた警察官相手に、3日で同じ土俵に立つなど。
女性を差別するわけではない。
けれど、男女の力の差はどうしても出る筈なのに、どうしてここまで強くなれるのか。
攻撃を避けながら、ひたすらに考える。
かわすのに必死で、思考が巡らない。
「何故、こんな、短期間で…強くなろうとするのですか…ッ!」
「悪寒が、消えない! ずっと消えない、誰かを失う前の…気のせいかもしれないッ! でも…」
腕を掴まれ、そのまま一本背負いを決められた。
咄嗟に受け身をとるが、背中がじんと痛む。
「…なにもしないより、ずっといい」
畳の上に仰向けで横になる俺を見下ろす柊さんは、強く真っ直ぐな顔をしていた。
俺が見てきた背中を持つ人に似ていた。
本当の意味で強い人の顔つき。
初めて、この人に負けた。
なのに何故だろうか、負けた悔しさよりも、柊さんを格好いいと思う気持ちが強いことが、また悔しかった。
「赤井はFBIの日本支部に戻る機会がある。そこに、私も着いていきたい。勿論、赤井には言わないつもりでいる」
「そんな、危険です! まだ組織のスパイが…」
「風見、俺と代われ」
降谷さんの方を見れば、険しい顔をしていた。
「赤井に、一時的だろうがなんだろうがFBIによる際はデスクを処分する都合があるから連絡を寄越せと言ってあります。その際に貴女に知らせることはできる」
ですが、と降谷さんは続けた。
「僕を一度でも負かすこと。これが条件です」
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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時