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「沖矢、には…言わないでくれ」
火傷した両目を隠しながら柊さんは言った。
車内で気付いたことだが、柊さんは爆風を直接受けたことによって耳が聞こえなくなっていた。
掌にゆびで平仮名をなぞっての意志疎通。
俺が巻き込んだせいなのだと思うと、今すぐにでも代わってしまいたかった。
病院に預けられるまでの間、彼女の代わりに彼女の言葉をメールにして送った。直ぐに返信され、内容を伝え、言われたことを送信する。
電話が来たときには【でんわ】と字をなぞると、出るなと言われた。病院につき、治療室へ運ばれた柊さんには、更なる不幸がふりかかる。
記憶をなくしたのだ。
それも平仮名も漢字も分からなくなり、言葉も意志疎通も出来ない。
ただ手を握ると落ち着いて眠りにつく。
耳が聞こえない、目は見えない、体は痛み、記憶はない、言葉も分からない。それに加えて三半規管がやられて、まともに座れもしない。それがどんなに辛いことか。
「公安で保護する」
その選択をするしかなかった。
本当ならば恋人である沖矢に話すべきだ。だが今は組織の構成員に狙われている身だ。下手に動けないし、何より記憶を失う前に沖矢には言うなと言われた。
柊さんが狙われる可能性もある。
機械関係に強い構成員だったため、俺が死んだ証拠がないとわかれば辺りの防犯カメラを手当たり次第探るだろう。そうなれば柊さんの命が危うくなる。
以前組織の人間がFBIに潜入し情報を得たという話を聞いたことがあるため、下手に今のFBI本部に連絡を回すわけにはいかない。
「風見、FBIに連絡をいれろ。前の合同捜査で使っていた番号。そちらから沖矢昴には知らせるなと」
前の番号は、一部の人間しか知らない。
そしてその人物らは今回の件を告げるのに値する人物で、組織に情報が流れることはないだろう。
「了解です。降谷さん、治療は…」
「僕は」
繋いだ手を見て、この役目は本来俺ではないのにと思った。
「…少し、電話をする」
かけた相手は[沖矢昴]。
かけて1コールもしないまま繋がり、暫く会わせることは出来ないと話して一方的に電話を切る。
どうか気付け、赤井……!
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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時