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降谷はAのスマートフォンの画面に表示されるメッセージのやり取りを見て、一つため息をついた。と、その時、掌に何かが触れる感覚がして自分を戒める。
「大丈夫です…あぁ、すみません」
自分の手に触れたそれに、指で平仮名をなぞっていく。
【へいきです】
顔をあげれば、両目が包帯で隠されたAの姿があった。
数時間前の出来事を振り返る。
*
組織の構成員にノックだと疑われ、個人的な恨み言を聞かされ、仕舞いには殺してやると言われたところで、俺の精神はかなり削がれていた。
爆発に巻き込まれないように構成員は早々に立ち去り、どうにか逃げられやしないかと思考を巡らせていた。
「安室さん!」
聞こえた声に安堵する自分と、焦る自分がいた。
目の前には爆弾があり、俺は後ろ手に手錠をかけられ柱に拘束され動けない状況。買い物帰りだったのだろう、買い物袋を放ってこちらに駆け寄ってくる。
「来てはいけない、離れてください! 時間がない!」
爆弾の残り時間は一分を切っていた。
柊さんは僕の手錠を見ると、近くに落ちていた銃を手にとって弾倉を確認した。
此処は武器庫だったため、銃の一つや二つあっても不思議ではないが、柊さんにはそれを使って欲しくなかった。
「両手を出来るだけ離せ!」
普段聞かない命令口調に、思わず従う。
バン、と音がして、両手が自由になる。
「走るぞ!」
そう言われ走り出したその時、柊さんの足が一瞬たじろぎ、ちらりと後ろを振り返る。
目線の先には買い物が入っているであろう紙袋。
俺には見えてしまったのだ。
気持ちを圧し殺すような彼女の顔が。
次の瞬間、視界が爆風で遮られた。
咄嗟に引き寄せた柊さんの体は、気づけば逆に引き寄せられて爆風から守られていた。
しかし至近距離で爆弾が爆発したことで吹き飛ばされて離れ離れになり、すぐさま起き上がり辺りを見渡す。
炎が立ち上る音が聞こえ、この場に長くいられないことを理解し、柊さんを探すと、彼女は脱出経路を確保していた。
「安室さん、出られるか!?」
「貴女、目を…!」
火の粉が入ったのだろう、目を無理矢理開いていた。それ以外にも外傷が目立つ。風見から外にて待機しているとの連絡があり、直ぐに駆けつけの病院に行くように指示をした。
炎の中拾った紙袋に入っていたものは、イニシャル入りの腕時計だった。
【
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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時