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「やっとキャッチボールの意味が分かったわ!」

ジョディはスッキリした顔でAを見た。
ハンバーグは作る際に、空気を抜く工程がある。
空気をはらんでいると形が崩れてそぼろになってしまうのだ。そのため手のひらから手のひらへ叩きつけるようにして空気抜くのだが、なるほど。それを[キャッチボール]と言ったわけだ。

「とーる君が初めてにしてはかなり上手かったから、崩れることも殆どなく出来た」

頭を撫でられる徹は少し照れたような顔をしていたが、少し落ち込んでいるようにも見えた。徹はこんな表情を出す子供だったのかと思った。けれど、そんな徹を撫でる彼女の顔が目に焼き付いた。

「でも、すこしくずれた」
「初めてで上出来だ。はじめから完璧な人なんていないよ」

食べようか。
Aのその一言で、俺達は席についてそれぞれ食事の前の挨拶をした。

そのハンバーグは凄く美味しくて、けれど少し崩れていて、手作りの料理というものだな、と思った。会食で食べた高級な料理よりも、想いがこもっている。

「美味いな」

俺がそういうと、徹の顔がふにゃりと緩んだ。

「もっとじょうずになる、みててねしゅういち!」
「あぁ」
「今度は何を作ろうか」

徹は嬉しそうにAを見た。
子供らしくなったというか、なんというか。
前までは変に大人びていたのにな。
と、少しほほえましく思っていたが、ちょっと待て。今度、とは。今度ってなんだ。

「こんど?」
「また機会があれば、一緒に作らないか?」
「…いいの?」
「一緒に作りたいんだ。とーる君はどうだ?」
「やりたい!」

元気のいい返事に、Aとジョディは薄く笑った。

「次は赤井を、ビックリさせようか」
「うん!」

今度があることは、まぁいい。だってあんな笑顔を見せられたら、とてもじゃないが次はないだなんて非情なことは言えないし、Aが嬉しそうにしているのなら、俺はその顔が見れるから満足だ。

食べ終わる頃には、日が落ちようとしていた。

「じゃあ、私はこれで帰るわ。ありがとうA」
「いいえ、こちらこそ。また遊びに来てくださいジョディさん」

俺はこのとき、ジョディが帰ったあと、頭を抱えることになるだなんて思ってもいなかったのだ。

「じゃあ、とーる君。風呂に入ろうか」
「うん! あれ、しゅういちは?」
「ん?」
「ぼくのかあさんととうさんは、ぼくがいるときさんにんいっしょにはいるよ?」

俺の脈拍は上昇し、Aは血の気が引いた顔をしていた。

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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時

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