46 ページ50
何をやっているんだ俺は。
早足で病院から出て、ため息をつく。
「…あいつの為じゃない…柊さんの為だ」
柊さんには、幸せになってもらいたい。
最初は僕を好きになって欲しいという気持ちもあった。けれど、柊さんを見れば見るほど、どれだけ柊さんが沖矢を好きなのかを知ることになってしまって。
もし沖矢昴が赤井秀一だったら?
そして赤井が沖矢としての皮を被ったまま彼女と付き合っているのだとしたら…俺が柊さんを幸せにしたいと思っていた。
あわよくば、といった感じだ。
沖矢昴が赤井秀一だと分かれば、という気持ちもあった。
そしてその気持ちはその通りになり、沖矢昴が赤井秀一だということが判明した。
だがそれと同時に、柊さんが沖矢昴ではなく、赤井秀一を好いていて赤井もそれと同じだと。
どうしたって、俺は敵わないとだと。
あの二人の間には、入れないのだと。
思い知らされた。
柊さんのことを好きになった気持ちは嘘じゃない。仕事の為にもった感情では無い。
初めて、惹かれた。
そんな相手だから、幸せになってほしい。
俺が傍にいたかった。
2つの気持ちが俺の中に生まれる。
どうやら俺は、自分が思っているより大人になりきれてはいないようだ。
「すみません、お店空けてしまって」
「いえ、大丈夫ですよ。警察の方からお電話で事情も聞きました」
梓さんの優しさに、思わず堪えていた涙が滲む。
下を向いて笑顔を作る。
「そうですか…良かった、少し心配で」
「安室さん」
遮った声のした方を見れば、梓さんは怒ったような顔をしていた。
「梓さん?」
「今日はもう帰ってください…そんな顔で、仕事をさせるわけにはいきません」
「えっ、ちょ、梓さん!」
「いいから!…安室さんは、普段はいつも笑ってますけど…今の笑顔は、見ていて心が痛みます。今日は、休んで下さい」
気がつけば私物を渡されて店の外に出されていた。呆然としていたが、梓さんに心配されるほど表情を作れていなかったのかと反省した。
539人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユキ - 田中。さん» 田中。さんの作品読ませて頂いております!コメント頂けてとても嬉しいです。琵琶湖をテーマ、というか、近江国を物語に入れたかったんです(笑)コメントありがとうございました、応援しています!! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
田中。(プロフ) - 琵琶湖という言葉にドキリとしました!これからワクワクしながら読みたいと思います (2018年6月11日 1時) (レス) id: ddae4419b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» 励みになります、本当に感謝です…! (2018年5月20日 11時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - まさかの和解!予想していなかった展開で驚きました!ゆっくりでいいのでこれからも頑張ってください! (2018年5月20日 7時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» いつも読んで下さってありがとうございます!コメントを読む度にほっこりとさせて頂いております。更新遅くてすみません、これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2018年5月12日 17時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユキ | 作成日時:2018年3月27日 18時