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柊さんの様子がおかしいと思ったのは、蘭さんと話している時もどこか上の空だったからだ。
声を掛けてみたが、特に話してはくれなかった。
けれど何かに気付いたようにガラスの向こうを振り向いた彼女が、焦りを前面に出して用事が出来たといったものだから追いかけようとした蘭さんを止めて追いかけた。
「チッ、こんな時に…!!」
僕が渡る前に赤信号になる。
自動車が勢いよく行きかう道路の一瞬の合間を縫って渡った。
柊さんが入っていった路地裏には、走り去っていく女の小さな後姿と地面に横たわる柊さん。
「柊さん!!」
固く閉じていた瞼をわずかに開いた柊さんは、掠れ声で僕を呼んだ。
見れば腹部は赤く染まっている。かなりの出血だ。
【私のコートのポケットにあの女性が送ってきたものが入っている、彼が無事かどうか確認してくれ】
かなりの激痛のはずなのに、なんでそこまで沖矢を心配するんだ。
「分かりました、分かりましたから…」
あぁ、だめだな、俺。
「もう喋らないでくれ」
どうしてもこの人には、死んでほしくないみたいだ。
救急車を呼び、彼女の腹部をハンカチで圧迫する。救急車が来るのがとても遅く感じた。
やっと来た救急車に彼女を乗せて、僕は付き添いとして一緒に乗る事になった。
彼女のコートのポケットに入っていた白い封筒を開けて、思わず息が止まる。
「これは…全部、写真…?」
沖矢昴の写真で、柊さんは顔を中心にボールペンで黒く塗り潰されている。
伊達に探偵の顔を持っている訳じゃない。
これまでの出来事でなぜこうなったのかは想像できるし、この写真を見れば誰だって分かる。
病院について手術室に運ばれる彼女を見送って、建物の外に出る。
彼女のスマートフォンのロックを指の跡から読み取り解除する。
沖矢昴という連絡先はすぐに見つかり、電話を掛けた。
〈…はい、沖矢です〉
「今、どこにいらっしゃいますか」
〈今は病院に向かっていますよ〉
電話越しに聞こえた言葉に驚く。沖矢はこのことを知っていたのか?
〈刺した本人が、謝りに来たので〉
ブツリ、と切られた電話に、沖矢が相当怒っているのだろうと予想できた。
刺した本人が、謝りに来た?
「…謝って済むことじゃないだろ」
沸々と煮えたぎるような怒りがこみ上げてきた。
スマートフォンの電源を切って、病院の中を入る。
長い廊下を歩いた先にある手術室のまだ消えていないランプに不安を募らせる。
柊さん、貴女まで俺の前からいなくならないでくれ。
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ユキ - 田中。さん» 田中。さんの作品読ませて頂いております!コメント頂けてとても嬉しいです｡琵琶湖をテーマ､というか､近江国を物語に入れたかったんです（笑）コメントありがとうございました､応援しています!! (2018年6月12日 20時) (
レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
田中。(プロフ) - 琵琶湖という言葉にドキリとしました！これからワクワクしながら読みたいと思います (2018年6月11日 1時) (レス) id: ddae4419b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» 励みになります､本当に感謝です…! (2018年5月20日 11時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - まさかの和解!予想していなかった展開で驚きました！ゆっくりでいいのでこれからも頑張ってください！ (2018年5月20日 7時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» いつも読んで下さってありがとうございます!コメントを読む度にほっこりとさせて頂いております｡更新遅くてすみません､これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2018年5月12日 17時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユキ | 作成日時：2018年3月27日 18時
