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私の恋人の朝は早い。
あの家を出て、沖矢…もとい赤井と工藤邸にお世話になっている私がこの頃思う事だ。
日が出始める頃に起きるのが私の一日の始まりだ。
薄暗く涼しい早朝は、起きるのに一番最適な時間だと思う。
と言っても昔は時計なんてものは無くて、日の位置で行動していたからその頃の名残なだけなのだが、案外自分の中ではいいサイクルだと思っている。
話がそれたな。
冬とはいえ、日の出始める時間は6時頃。
決して遅くは無いと思うのだが、朝起きた時には必ずと言っていいほどに赤井は起きている。
まぁ起きていると言っても本当に起きているだけでベッドからは出ないし、そのおかげで私は日の出まで熟睡できるのだが…本件は別だ。
寝起きの顔を見られるのが嫌なのだ。
朝目を覚ませば必ず赤井は私の寝起きを見て抱きしめてから体を起こす。
本人は満足そうだが、こちらとしては寝起きの舌っ足らずで寝ぼけ眼の状態を見られるのだ。
毎朝のように埋まりたい衝動に駆られる。
「…赤井、そろそろ放してくれないか」
絶賛その最中だが。
「あと少し」
「そういって何分経ってると思っているのだ、馬鹿井が」
「ほぉー、君は今俺の腕の中にいる事を忘れたのか」
「やめんか馬鹿者」
ゆるく巻きつけられた赤井の腕に力が少しこもった瞬間に、赤井の顎にヘッドショットを食らわす。腕は不自由な状態にあるために当初は戸惑ってばかりで赤井の策に嵌っていたが、今となっては私にはこの技がある。
「…逞しくなったな」
「お褒めに預かり光栄だな」
顎を押さえてそっぽを向く赤井を放っておいて、ベッドから出る。
工藤邸は広く一人で歩けばまだ私は迷子になってしまう為に、赤井と行動を共にせねばならない。
「早くしてくれ、私は早く朝食を作りたいのだ」
「まだ覚えていないのか」
やれやれとでもいうようにわざとらしく両手を上げる赤井。
ちらりとこちらを見てくるあたり、私が罪悪感を擽って遊ぶ気なのだろうが…。
お前がその気ならこっちだって手はあるぞ。
「仕方ないだろ。今日の朝食は焼き鮭だな」
「すまなかった、今日は朝から一緒に出掛ける予定なんだから焼き魚は止めてくれ」
「まだ魚の身のほぐし方に慣れないのか」
「君がほぐしてくれるんだからいいだろう」
自分でやる努力をしろ。
じとっと赤井を見れば、突然頭を撫でられた。
「結局、二人でいろって事だ」
「…まぁ、そう…だな」
「だろ?」
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ユキ - 田中。さん» 田中。さんの作品読ませて頂いております!コメント頂けてとても嬉しいです。琵琶湖をテーマ、というか、近江国を物語に入れたかったんです(笑)コメントありがとうございました、応援しています!! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
田中。(プロフ) - 琵琶湖という言葉にドキリとしました!これからワクワクしながら読みたいと思います (2018年6月11日 1時) (レス) id: ddae4419b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» 励みになります、本当に感謝です…! (2018年5月20日 11時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - まさかの和解!予想していなかった展開で驚きました!ゆっくりでいいのでこれからも頑張ってください! (2018年5月20日 7時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» いつも読んで下さってありがとうございます!コメントを読む度にほっこりとさせて頂いております。更新遅くてすみません、これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2018年5月12日 17時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ | 作成日時:2018年3月27日 18時