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体がポカポカと体が温まった状態で起きた。
朝特有の瞼の重さもない。
珍しくよく眠れた上に、寝起きまで良いとは最高じゃないか。
はて、私はこんな枕を持っていただろうか。

枕じゃない。

赤井だ、赤井秀一。
なぜこの男は私を抱きしめて眠っているのだ。
逃げようとするも、相手は体格のいい男だ。
勝てるはずもなく体力を消費して暴れただけに終わった。

「ん…Good morning」
「bad morningの間違いだろ」

何がグッドモーニングか。

「よく眠れたようで安心したよ」

何故この男は突き放しても突き放しても、そんな優しい目で見てくるんだ。
私の事を、そこまで考えてくれるんだ。

でも結局は、その優しさに溺れたい自分がいるのだ。だから嫌いだと言えない。
彼のことを考えるのならば、私は嫌われてでも離れるべきだ。
これだけ優しい男なのだ、女性などすぐに寄ってくるだろう。

「…過保護だな、貴方は私の保護者か」
「どちらかといえば夫になりたいが」
「冗談でもやめろ」

ほら、言えない、意気地なし。
言え、言わなきゃ伝わらない。

「……赤井、さん…止めてくれ。貴方ならばもっと相応しい女性がいるはずだ。私は一人ではないと言ってくれたその一言があれば、充分すぎるものなのだよ」

言った、言えた、言ってしまった。
頭の中をグルグルと回る言葉。
これが正解のはずだ、間違っていないはずだ。
なのに。

「泣きながら言われてもな」

なんで涙が止まらないんだ。

「君の基準で、相応しいかを決めるな。俺が君のことを好きだというだけでは、君の側にいる理由にはならないのか?」
「死ぬ直前に、世界を綺麗だと思うような女だぞ」
「それは君が全てを許したからだ。そして君はもう忌み子でも人柱の子供でもない。俺が地球上の何よりも愛しく思う女だ。君も、俺を好いてくれているんだろう?」

涙は止まることを知らない。
駄目だ、止まらないんだ。

「……好きだよ。好きなんだ、誰よりも。だから、幸せになって欲しいと思っ」
「ならば君が側にいてくれ。俺の幸せは君と共にいられる事なんだ」

そうだった。この人は、沖矢昴の皮をかぶっていても、言葉は真っ直ぐだった。だからこそ、私の心に強く響いたのだ。欲しい言葉を、それ以上の言葉を、愛情をくれる。

「与えられてばかりだ」
「君にはまだ与えたりないくらいさ」

彼の胸板に額をこすり付けて下を向いた。

「後悔しても、もう遅いぞ」
「一生手放さないから覚悟しろ」

私の頬に伝ったのは、嬉し涙だ。

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ユキ - 田中。さん» 田中。さんの作品読ませて頂いております!コメント頂けてとても嬉しいです。琵琶湖をテーマ、というか、近江国を物語に入れたかったんです(笑)コメントありがとうございました、応援しています!! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
田中。(プロフ) - 琵琶湖という言葉にドキリとしました!これからワクワクしながら読みたいと思います (2018年6月11日 1時) (レス) id: ddae4419b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» 励みになります、本当に感謝です…! (2018年5月20日 11時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - まさかの和解!予想していなかった展開で驚きました!ゆっくりでいいのでこれからも頑張ってください! (2018年5月20日 7時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» いつも読んで下さってありがとうございます!コメントを読む度にほっこりとさせて頂いております。更新遅くてすみません、これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2018年5月12日 17時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ | 作成日時:2018年3月27日 18時

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