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ボウヤが帰ったあと。
ソファーに座った状態で、膝の上に彼女の頭を乗せていた。黒黒とした長い髪を弄りながら暫く過ごしていると、窓の外で烏が鳴いた。
「カァー、カァー…」
窓の枠に上手く足をかけてとまったまま、こちらに向かって鳴き続けた。
その鳴き声で彼女は目を覚ました。
上体を起こして、窓との外を見つめる彼女はやはり烏を見つめていた。その烏は、今日も一羽。
ふらりと立ち上がって窓に向かう彼女。
「まだ出会えていないの…?それとも、君は…」
“残されてしまった?”
彼女がそう聞いた直後、烏は外を向いてアー、と一つ、大きく鳴いた。
バサバサっと音がしたかと思うと、窓の外の木の枝に一羽の烏がとまった。
「カァ、カァー、アー」
「アー」
窓辺にいた烏は、一回り大きな烏の隣に寄り添うように移動した。
「…良かった」
俺が彼女の隣に立てば、烏はカァ、と一鳴きして空へ飛び去った。
「…一人では、ないのだな……良かった、良かっ……!」
彼女とカラスが重なった。
身体を抱き寄せ、背中をさする。
今、流せなかった分の涙を流してしまえ。
「……お前ももう一人ではないだろう」
「…ありがとう、沖矢さん。…!!!!?」
俺を見た途端に、サッと青ざめる。
そういえば変装をしていないんだったか。
変声器も外していたな。
「騙していてすまない。俺は赤井秀一、沖矢昴は俺の隠れ蓑だ」
「え、は?ちょ、な………こんの…たわけぇ!!!!」
「ぅがッ!」
慌てていたAだが、俺が腰を抱き寄せていることに気付き、アッパーを繰り出してきた。
だが俺は見逃さなかったぞ、耳が赤くなっていたことを。照れ隠しか、可愛いものじゃないか。
……中々に痛い。
「お、沖矢さんは…つまり、赤井秀一という人物であったということか……?」
「Yes」
肩で息をしていた彼女だったが、深呼吸をすると、静かに言葉を紡いだ。
「……すれろ…!」
「ん?」
キッと俺を睨んだ。
「忘れろと言っているのだ!」
「無理だな」
「なんだと!?」
あぁ、人生が終わった。一生の恥だと落ち込む彼女の髪を一束掬って口付ける。
「好きな相手の可愛い顔を、忘れるわけがないだろう?」
「…泣き顔を可愛いとは趣味が悪いな」
「君はどんな顔でも可愛いが」
「黙ってくれないか頭の中を整理するから」
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ユキ - 田中。さん» 田中。さんの作品読ませて頂いております!コメント頂けてとても嬉しいです。琵琶湖をテーマ、というか、近江国を物語に入れたかったんです(笑)コメントありがとうございました、応援しています!! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
田中。(プロフ) - 琵琶湖という言葉にドキリとしました!これからワクワクしながら読みたいと思います (2018年6月11日 1時) (レス) id: ddae4419b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» 励みになります、本当に感謝です…! (2018年5月20日 11時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - まさかの和解!予想していなかった展開で驚きました!ゆっくりでいいのでこれからも頑張ってください! (2018年5月20日 7時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» いつも読んで下さってありがとうございます!コメントを読む度にほっこりとさせて頂いております。更新遅くてすみません、これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2018年5月12日 17時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ | 作成日時:2018年3月27日 18時