検索窓
今日:2 hit、昨日:17 hit、合計:315,095 hit

21 ページ24

沖矢昴(赤井秀一)side

今までホルマリンが投与されたと考えていた遺体は、光となって消えていった。
現実では考えられない事に夢ではないかと思ったが、そんなことはなかった。

“赦し、赦されたかったのだな”
“おかえり、赦されたかった私”

その言葉がずっと頭の中を駆け巡っている。
ただ自分の身体を抱きしめ泣いている彼女の背中をさする。

「ゆ、るされたかった…生きていることを……ずっと、一人ではないと、誰かに…誰かに言って欲しかったのだ…!」

泣きじゃくる彼女を見て、彼女に感情が戻ってきたのではないかという考えが浮かんだ。
さっきの身体は彼女の感情で、それが彼女に戻ったのではないかと。
そんなことないとは分かっているが、どうしてもそう考えてしまう。

ボウヤはソファーを指さした。

「赤井さん、あれ…!」

ボウヤが指さした先を見れば、そこにはひらひらとした袖の着物をまとった女がいた。
女の周りは少しぼんやりと光っていて、幽霊でも見ているようだ。

女はゆっくりと彼女に近付き、まるで自分の子供に触れるかのように、彼女の頭を撫でた。

「やっと受け入れられたか」

彼女はそのまますやすやと眠り、女は袖で口元を隠して笑った。

「こうしていると、まるで小さな赤子のようだの」
「お前は、何者だ?」
「我は伊邪那美命(イザナミノミコト)。あの世での最終審判者。魂の行く先を決める長である。この子は今から4世紀ほど前、天正二年の1573年に、滋賀が日照りに悩まされたときの人柱。……主らに話してやろう、この子が人生を」

そう言って伊邪那美命は、愛おしそうに彼女を抱きしめた。

22→←20



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (293 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
539人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ユキ - 田中。さん» 田中。さんの作品読ませて頂いております!コメント頂けてとても嬉しいです。琵琶湖をテーマ、というか、近江国を物語に入れたかったんです(笑)コメントありがとうございました、応援しています!! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
田中。(プロフ) - 琵琶湖という言葉にドキリとしました!これからワクワクしながら読みたいと思います (2018年6月11日 1時) (レス) id: ddae4419b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» 励みになります、本当に感謝です…! (2018年5月20日 11時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - まさかの和解!予想していなかった展開で驚きました!ゆっくりでいいのでこれからも頑張ってください! (2018年5月20日 7時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» いつも読んで下さってありがとうございます!コメントを読む度にほっこりとさせて頂いております。更新遅くてすみません、これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2018年5月12日 17時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ユキ | 作成日時:2018年3月27日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。