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天正二年、1573年。
晴れた空の下、大きな琵琶湖に頭を下げて、白い着物を引きずるように水に足を入れる。

静かに波を立てながら深い所まで水の中を歩いていく。湖の近くには、拝むように仕立てを額に当てて下を向く顔見知り。

“ここずっと日照りが続いとる”
“忌み子のお前も、この近江を守る為にお役に立てるんや”
“最期くらい役に立って貰うで”

静かに指を組み、息を吐く。
息を吐ききってから、ゆっくりと湖の中に入る。

呼吸の代わりに入ってくる大量の水。
濡れて重くなった重ねられた白の着物が、顔を出すことを許さない。
苦しい。それだけが強く感じた。

やがて苦しさから開放され、強く閉じていた瞼を上げれば。




そこには幻想的な、美しい景色があった。

太陽の光が差していて、水の中は明るい。
上を見れば、水面が光を反射していてキラキラと光っていた。
生温い水は、まるで身体を包み込むかのように優しく感じた。

あぁ、楓。
お前と一緒なら最高だっただろうに。


天正二年、1573年の夏。
近江国の人々は日照りに悩まされた。
作物は枯れ、水も琵琶湖を頼る他なかった。
そこで、人柱を出すことになる。
この話はその、人柱になった子供の話。




近江国(おうみのくに)…昔の言い方で滋賀県

0.5→



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ユキ - 田中。さん» 田中。さんの作品読ませて頂いております!コメント頂けてとても嬉しいです。琵琶湖をテーマ、というか、近江国を物語に入れたかったんです(笑)コメントありがとうございました、応援しています!! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
田中。(プロフ) - 琵琶湖という言葉にドキリとしました!これからワクワクしながら読みたいと思います (2018年6月11日 1時) (レス) id: ddae4419b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» 励みになります、本当に感謝です…! (2018年5月20日 11時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - まさかの和解!予想していなかった展開で驚きました!ゆっくりでいいのでこれからも頑張ってください! (2018年5月20日 7時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» いつも読んで下さってありがとうございます!コメントを読む度にほっこりとさせて頂いております。更新遅くてすみません、これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2018年5月12日 17時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ | 作成日時:2018年3月27日 18時

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