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リビングに戻れば、カレーを見ながら少しうずうずとしているAがいた。
まるでお預け中の猫のようだ。

テーブルに自分とボウヤの分のカレーを置けば、ハッとしてこちらを見上げてくる。
すぐに目を逸らすのは、やはりどう接していいか分からないという気持ちの表れか。

カレーを見つめ直した彼女の頭を優しく撫でれば、すぐに肩を揺らしてこちらを再度見上げた。

「な…ぜ、撫でたのだ。撫でる要素なぞどこにあった!?」
「なぜか?」

ふっと笑えばジトっと俺を見る。

「愛情表現なんだろう?これは」
「っ…違うな。私は貴方が落ち込んでいるのが私のせいだと分かったから、せめて誤解だと教えてやろうと」
「この真っ赤な耳を隠してから言ってもらおうか」

俺が自分の耳をトントンと指でつつけば、彼女は耳を手で隠した。

「してだな、けして貴方を恋愛的な意味で好きというわけではなく」
「恋愛ではなく親愛の方では好いて」
「いない。一言もそんなことは」
「ホォー、恋愛的な意味で、と言われたので親愛の意味では好いてくれているのかと思ったのだがな」
「余計な勘の鋭さは捨てろ、今すぐに」
「当たりかな」

「ぼ、僕お腹空いちゃったなぁ!!」
「よし食べよう、今すぐに、冷める前に」

ボウヤの一言で、攻防は収まった。
早口でまくしたてるように行った彼女は、早く離れろと暗に言っていたのだろう。

「いただきまーす!」
「いただきます」

両手を合わせて軽く礼をする彼女は、やはり礼儀正しいと思う。
そして物を食べるときに実際には飛んでいない花が飛んでいるように見える。
前にボウヤに言ったところ、ボウヤの目にもそう映っているらしいため、俺の目が異常なわけではない。

「冷めるぞ、せっかく美味いのにもったいない」
「手料理を褒められるのは悪くないな」
「コナン君から聞いたぞ。カレーはカレールウというものがあり、失敗はしづらいそうだな」


「……」
「手が止まっているぞ、ボウヤ。どうした、味付け(七味)の準備は万端だ。安心するといい」
「赤井さんは俺を殺したいの!?」

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ユキ - 田中。さん» 田中。さんの作品読ませて頂いております!コメント頂けてとても嬉しいです。琵琶湖をテーマ、というか、近江国を物語に入れたかったんです(笑)コメントありがとうございました、応援しています!! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
田中。(プロフ) - 琵琶湖という言葉にドキリとしました!これからワクワクしながら読みたいと思います (2018年6月11日 1時) (レス) id: ddae4419b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» 励みになります、本当に感謝です…! (2018年5月20日 11時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - まさかの和解!予想していなかった展開で驚きました!ゆっくりでいいのでこれからも頑張ってください! (2018年5月20日 7時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ゆうさん» いつも読んで下さってありがとうございます!コメントを読む度にほっこりとさせて頂いております。更新遅くてすみません、これからもこの作品をよろしくお願い致します! (2018年5月12日 17時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ | 作成日時:2018年3月27日 18時

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