25:少年と電話 ページ25
家の前に着くと、扉に荷物がかけられていた。
同僚からの差し入れだと刀也に伝える。
中身はインスタントのお粥やゼリー、ポカリなど。
腕から下ろしてもらい、鍵を開けた。
「ちゃんと休んでくださいね」
扉の前で私の頭を撫でながら微笑む刀也。
そっか、帰っちゃうのか。
無性に寂しく感じてしまう。
「…ん、やすむ」
移してしまうのも良くない。
しかも日も暮れている。
名残惜しい気持ちを抑えて家の扉を開けた。
「おやすみなさい。いい夜を」
「気を付けて帰ってね。おやすみ」
振り返って彼に手を振る。
でもやっぱり寂しくて。
踵を返した後ろ姿に声をかけた。
「…寂、しいから、電話してもいい…？」
いい歳した女が何を言っているんだ。
お姉さんだぞ。年上だぞ。
言った後に後悔が込み上げてくる。
急に甘えられても困るだけだ。
しかも今まで散々年上ぶってきたのに。
「やっぱなんでも…」
「いつでも掛けてください。待ってます」
取り消す言葉よりも先に返ってきたのは嬉しそうな声。
顔を上げると満面の笑みを浮かべている。
な、なんでそんなに笑ってるんだ。
「んふふ、頼ってくれて嬉しいです。
…すぐ帰りますね。では！」
そう言い残すと、すぐに駆け出した。
思わず笑みがこぼれる。
単純なのか、ピュアなのか。
呆れながらも嬉しいと思う私も末期だ。
刀也から家に着いたという連絡が入る。
こういう所、律儀だよね。
そしてなんともわかりやすい。
「…電話、待ってるやつだよね」
どう考えても、電話かけてきていいよ！の合図だよね。
家帰ってきたからいつでも出来るよ！ってことだよね。
…まぁ、かけない理由もないか。
刀也とのトーク画面から呼び出し画面に切り替える。
特有の呼び出し音が数回鳴った。
「…もしもし、」
「んふふ、もしもし。さっきぶりですね」
照れ臭さを隠しながら声を出すと軽く笑われる。
それと同時に、少し驚いた。
…あれ、電話ってこんなに声近かったっけ。
耳元で優しさを多く含んだ刀也の声が聞こえる。
電話で照れ臭くなるなんて…。
「ねぇ！私若返ったかもしれない！」
「…熱上がったんですか？今何度？」
自分で自分と思えないピュアさに興奮して声を上げた。
もしかしたら若返った！？
病院でもらった薬が某体が縮む薬だった！？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1123人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「2j3j」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミュウト(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ニコさんの書くお話にいつもドキドキしてました…！幸せな時間をありがとうございました！ (10月10日 10時) (
レス) @page50 id: 416a70e64b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみ【低浮上なう】(プロフ) - 完結おめでとうございます！！顎が…かっこいい…って悶絶しながら読んでましたw (7月31日 0時) (レス) @page50 id: f3d0772f96 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の凉宮 - あんまりNLは好んでみないし、すきやないけどこれは見れる！おもしろい (5月21日 15時) (レス) @page41 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
いろね(プロフ) - 俺、男女の恋愛って苦手なんですけどこのお話は嫌いじゃなくて不思議です！！ここまで心に響いて尊い、推せる！って思えるの初めでです！ありがとうございます！！！！！ (5月20日 0時) (レス) @page41 id: 3c850ea3ab (このIDを非表示/違反報告)
おもちちゃん(プロフ) - てぇてぇ、、てぇてぇの過剰摂取で死にそうになりながら読みました。大好きです (2023年1月4日 7時) (レス) @page33 id: b3862cde2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ニコ | 作成日時：2022年8月11日 3時
