第159話【災難】《賢斗》 ページ9
「紅華ちゃん、なんで僕達こんな状況なわけ。確か外から眺めてたはずなんだけども」
「お前……。いや、私も知らん。ともかくここは夢の中みたいだ」
「そりゃあ、分かるけど。というか、夢の中でも寝るんだね」
脂汗をかきながら眠る一月は苦痛の表情を浮かべていた。手に握られた呪符は力んでいるのか少しシワが付いている。
賢斗はどうして自分がここにいるのかあまり理解出来ていないようで頭の中で熟考していた。が、諦めたのか電車の手すりを掴んでみたりしている。
「おー、ここなら僕も実体化してるみたい。それに現代の電車は凄いね。奥にも繋がってるんだ。でも床冷たい」
「冷たいのは裸足だからだろ。まあそれはおいて、一宮さん起こすぞ」
はーい、と気だるげな声で返事をし、賢斗はペチペチと一月の頬を叩く。しかし、中々起きないので紅華が強めに揺すぶってみても起きない。その為、やる気をなくした賢斗が一発強く叩くと一月は飛び起き、反射からか賢斗の方に呪符を投げつけた。
「わぁぁッ!! それは死ぬ、それは死ぬから!」
賢斗はパニック状態に陥り、既に死んでいる事は完全に頭にないのか死ぬと叫び、急いで呪符から逃げる。ようやく逃げ切れた時、賢斗は余程疲れたようで息を切らせて深呼吸をしていた。一月はごめんと何度も謝っている。寝ぼけてたとはいえ、解体係と間違えられたのだ。
「なんで二人がここにいるのかさっぱりなんだけど。ここは僕の夢の中だよね」
「そうですけど、外部から妖気が注入されたようで夢に異変が起きているようです。多分それを叩かないと夢から出られないと思います」
その説明で一月と賢斗は現状を把握して今やるべきことを定めた。しかし、どう倒すかというと一月の持つ呪符か紅華の怪異能力しかない。賢斗は完全に能力がなくお荷物なのだ。周りを見渡すか囮になる程度しか出来る事がない。あの図書室であれば賢斗が掌握出来ているので弱い怪異程度なら捻り潰す事ができる。しかし、外に出れば無力な亡霊だ。
「それにしても人選酷いでしょ……。僕じゃなくて風音や乙女のほうが戦力になるってのに」
ブツブツと呟く賢斗は扉に手を当て俯いている。自身の戦力不足を嘆いているようでその表情は暗い。
「だ、大丈夫だよ。僕も呪符二枚しかないから、それがなくなったら何も出来ないから。弓矢があれば別なんだけどね」
一月の慰めはあまり慰めになっていないようで賢斗の顔は依然として晴れない。
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yoishi@桂じゃない、ヅラだ(プロフ) - 終わりました!! (2017年2月8日 6時) (レス) id: f918b81d30 (このIDを非表示/違反報告)
yoishi@桂じゃない、ヅラだ(プロフ) - 修正します。 (2017年2月8日 6時) (レス) id: f918b81d30 (このIDを非表示/違反報告)
アセロラゼリー(プロフ) - 明咲こよりさん» 申し訳ない!有難うございます! (2017年2月7日 23時) (レス) id: 6b17067a39 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - アセロラゼリーさん» 余計なお世話だったら申し訳ないのですが、196話の人物の名前はあれで宜しいのでしょうか?余計なお世話だったらすみません… (2017年2月7日 23時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 続編を作成しました!【http://uranai.nosv.org/u.php/novel/Syokaii5/】です。パスは変わりません。 (2017年2月7日 21時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:明咲こより+他の参加者様 x他5人 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2017年1月22日 23時