【募集企画】怪異探偵部４【小説】 (ページ8)

今日:19 hit、昨日:1 hit、合計:16,072 hit

第158話【除霊】《藤崎紅華》ページ8

一宮は肩の力を抜いて寝た。
手にはさっき博物院から渡された呪符がある。
博物院曰く、物を身につける事で夢の中に持ち込める、ということらしかった。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

夢の中では、一宮が見た猿夢の続きが始まろうとしていた。

「次は～挽き肉～挽き肉～」

挽き肉にされてたまるものか。
一宮は勇気を振り絞った。
そして、猿夢に向かってこう言った。

「僕は君達に屈しない!!
僕には仲間がいるから!!
絶対に生きてみせる!!」

そう言って、一宮は解体係二人に呪符を貼り付けた。
後は、スイッチを探すだけだ。
一宮は目星を運転席に付けた。
彼は運転席まで走っていった。
体が軽く感じた。

「これだな」

一宮はスイッチを押した。
そして、電車は、止まった。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

一宮が夢の中で走り回っているのと同時進行で、除霊が行われていた。
助っ人を申し出た人達が半跏思惟像に念を入れ、博物院は般若心経を詠唱していた。

「…なんていうかさ」

賢斗は部室の様子を窺いながら呟いた。

「俺の想像したのと違う気がする…」

「なんだ？
お前、時宗の踊念仏みたいなのを想像してたのか？」

「いや、そういう訳じゃないんだけどさ…」

そう言う賢斗の顔は強ばっていた。

「なあ、紅華ちゃん。
これで終わると思う？」

「知らん。
ていうか、どうしたんだ、急に」

「いや、なんか、見られている気がしてさ。
もしかしたら、また何か起こるかも―」

と、次の瞬間、賢斗がうずくまった。

「おい、どうしたんだ!?
まさか、成仏するのか!?
成仏するんだよな!?」

「なんで嬉しそうなんだよ!!
後で覚えてろ!!
って、違う!!
そうじゃ…ない…。
急に…体の…自由がァ!!」

その時、賢斗と紅華の脳内に声が聞こえてきた。

『悪いな。
これも猿夢に勝つためだ。
堪えてくれ』

「君…誰だ…」

『知る必要は無い。
どうせ次に目覚める時、お前はこのことを忘れるのだからな。
お前をあの空間に転送してやる』

そう言って、賢斗は消えた。
いや、転送された。

「その声は、師匠…」

『紅華、このままでは猿夢は終わらん。
あの青年が夢の中で電車を止める際、外部から妖気が注入されるのを見た』

「何!?」

『あれを見ろ』

紅華の視線の先には、苦しそうに寝ている一宮がいた。