第154話【足りないもの】《神瀬臥玖》 ページ4
私に足りないものなんて、きっといくらでもあるのだろう。
急に何を言っているのかと思うが、私も何故か分からない。
ただ、周りを見ていると、皆さんを見ていると。
自分がどれだけ空気なのかが、嫌と言うほど分かってしまう。
今回の猿夢の件も、私は何もできていない。
除霊をする博物院さんを呼んだのは藤崎先輩だし、他の皆だって――全員と言うわけでもないが――進んで手伝うと言った。
一宮先輩は被害者だけどちゃんと向き合っているし、凄いと思う。
綾田くんだって明るい雰囲気にしてくれたりするし、部長も泡渕先輩も皆皆何かしらの役に立っている。
この中で役立たずなのは、きっと私だけだ。
私は皆のように強くない。
勇気が無い。
出そうと思っても出せない、なんて傍から見ればただの言い訳にしか聞こえないから。
今日も、今回も、私はただのお荷物だ。
__もし、夢の中に入れたのなら。
逃げて苦しむ一宮先輩を鏡の中に避難させられるのに。
私は夢の中に入るチカラは持っていないから、そんな、夢みたいな事あるわけない。
「………………」
現に今だって、ただ一人だけ浮かない顔で俯いている。
今も、一人だけ。
どうして私は藤崎先輩のようになれないのだろうか。
藤崎先輩はいつだって人気者で、誰かに頼られてて、格好良くて__まだまだ良い所ならいっぱいある。
対して私はクラスでも仲いい子なんて一人しかいないし、頼られることなんて無いし、逆に頼ってばかりだ。
__何だ、私、藤崎先輩の足元にも及んでいないじゃないか。
そして今日もまた考える。
私に足りない事を。
いくつでも、いくつでも。
例え虚しくなって、涙が流れたとしても。
足りない事を探し続ける。
それが全て見つかるまで、私は何も口出ししてはいけない。
何も、言ってはいけない。
ただ周りに合わせて、先輩の言う通りにしか動かない。余計なことなんて、何にもしない。
小学生時代のあの時みたいに、私の余計な一言で、みんなが崩れない様に。
「__指示を、ください。
……私がここにいる理由を」
そう誰にも聞こえない様な声で、呟いた。
きっと誰にも聞こえていない。
私の、助けを求める声なんて。
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yoishi@桂じゃない、ヅラだ(プロフ) - 終わりました!! (2017年2月8日 6時) (レス) id: f918b81d30 (このIDを非表示/違反報告)
yoishi@桂じゃない、ヅラだ(プロフ) - 修正します。 (2017年2月8日 6時) (レス) id: f918b81d30 (このIDを非表示/違反報告)
アセロラゼリー(プロフ) - 明咲こよりさん» 申し訳ない!有難うございます! (2017年2月7日 23時) (レス) id: 6b17067a39 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - アセロラゼリーさん» 余計なお世話だったら申し訳ないのですが、196話の人物の名前はあれで宜しいのでしょうか?余計なお世話だったらすみません… (2017年2月7日 23時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 続編を作成しました!【http://uranai.nosv.org/u.php/novel/Syokaii5/】です。パスは変わりません。 (2017年2月7日 21時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:明咲こより+他の参加者様 x他5人 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2017年1月22日 23時