【募集企画】怪異探偵部４【小説】 (ページ27)

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第177話【もしもの時のために】《鈴木将門》ページ27

「あー、もしもし。」

と図書室に来る

少し疲れた顔をしていた、この異界の図書室の主は

「やぁ、また君か。」

と、彼が顔をあげる。

しんどそうなのは、仕方無いとして

「しんどそうなところ、申し訳ないけど、これを預かって貰いたいんだ。」

と、袋に入った数本の針とそれを射出するための小さい装置を渡した。

「……何これ？」

と少しだけ顔をしかめながら聞く

「僕が作った退魔専用の針、とはいっても気休め程度だから賢斗でも、ピリリとくるくらいだろうけど、僕程度の中途半端な存在には良く効くように作っている。」

と、説明する。

「何で君が作り方なんて知ってるんだよ？」

僕は首をかしげ

「本には乗ってないのかい？」

と不思議そうに聞く

「抜け落ちてる。」

嗚呼、成る程。

少し苦笑いしながら

「まぁ、昔ね。」

と答える。

少し怪しげな視線を向けてくるも

僕はそれに気づかない。

「それで、何でこんなものを僕に？」

「君は覚えが良いだろう？」

と答え

「もし、僕が暴走したりしたときはこれを使って止めてほしい。射出するのは君じゃなくても良い。
もし時がきたら使ってくれ。」

と答える。

「………解った。」

けど…と彼は続ける。

「使わないことを祈っているよ。」

僕は微笑して

「そうだね。」

と答えた。

「……大丈夫かい？」

少し困った顔をしてから僕は

「解らないね。」

だから渡したんだ。

「……これを使って君が死ぬなんて事はないよね？」

「無いとは言い切れない。」

と答える。

「だけど、死んだら死んだ。それだけ。」

少し彼が苦い顔をする。

僕は頭をかき

「賢斗、偉そうに言うけど、生き物というのは何時かは死ぬんだ。
人間、妖怪、自然、動物とか勿論地球だって何時かは死ぬ。
これだけはどんなペテンをしても変わらない。」

きっと僕が死んだら悲しむ人もいるのだろう。

けどそれはそれなのだ。

「それが早くなるだけ。」

だけど何時かは立ち直る。

悲しみは引きずってしまうだろうけど

周りに人がいるのなら

それも少しは軽くなるだろうか？

僕にはそれがいなかったから解らない。

少し何か言いたそうな彼に

「ごめん。僕はその…なんだろう。
そういう、他人の気持ちに関しては鈍いんだ。
いや、鈍いというよりは解らない。」

と答える。

「僕は何も解らなかったから。」

と、苦笑いしながら言う

「さて、じゃあ僕は帰るよ。」

と、何時も通り、本を戻し帰ることにした。