第152話【眠るということ】《一宮一月&賢斗》 ページ2
「……途中までとはいえ僕は寝るんですか?」
「まあ、そうなる」
「む、無理です……。僕には、そんな事出来ません」
サーッと血の気が引き、また先程の不安で恐ろしい感覚が蘇ってくる。僕は臆病で役に立てない。折角協力してもらっているというのに僕自身は乗り気にならない。眠るのが怖い。
「一宮くん……! お願い」
部長を始めとした部員達が僕を心配してくれる。でも、ダメだ。出来ない。
数分経った。辺りは沈黙としており、僕の顔色はまた同じように戻っていると思う。目の前で人がおぞましい方法で死んでいく様を見ることが、悲しい断末魔を聞く勇気が僕にはない。無理矢理にでも眠気を抑えていても結局寝てしまうというのに。
「この状況で言うのもなんだけどさ、僕外にいるよ。その仏像を出されてからなんだか身体が重くてさ。やっぱり、仏様には敵わないねー。
ま、せいぜい頑張りなよ。逃げて死ぬのならそこまでの命って訳だ」
その沈黙を破った賢斗はせせら笑うような声でそう言った。彼の表情は分からないけれどきっと呆れているんだろう。本棚さんは生徒に関して知らないことはないんだから。
賢斗の言葉で気がついた。誰にだって出来ないこと、苦手なことはあるんだ。それを最初から怖気づいて逃げるのではなく、改善策を講じて向かい合うんだ。誇り高き生というのはそういうものなのかもしれない。
「すみません、前言を撤回します。僕は逃げない、与えられた役割を全うします!」
「とはいえ、寝るだけでしょうに……」
外からそれを眺めていた僕はそう呟くしかなかった。夢には一月の身一つで挑むことが必要となる。しかし、獏の怪異に戦闘能力などない。一月に出来るのは寝るだけ。それか襲撃を避けるくらい。もしや、誰か付き添うのかな。
それより気になるのはあの仏像で身体が重くなるんだけどここまで離れていてもまだ若干重く感じるんだよな。ないはずの心臓が鼓動を打ち鳴らしたような気分になったのと似ている。どっちも仏像のせいかなあ。
あっ、あいつが寝る。猿夢をどう攻撃するのか。不謹慎とは思うものの、楽しみだと思う僕がいた。
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yoishi@桂じゃない、ヅラだ(プロフ) - 終わりました!! (2017年2月8日 6時) (レス) id: f918b81d30 (このIDを非表示/違反報告)
yoishi@桂じゃない、ヅラだ(プロフ) - 修正します。 (2017年2月8日 6時) (レス) id: f918b81d30 (このIDを非表示/違反報告)
アセロラゼリー(プロフ) - 明咲こよりさん» 申し訳ない!有難うございます! (2017年2月7日 23時) (レス) id: 6b17067a39 (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - アセロラゼリーさん» 余計なお世話だったら申し訳ないのですが、196話の人物の名前はあれで宜しいのでしょうか?余計なお世話だったらすみません… (2017年2月7日 23時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
明咲こより - 続編を作成しました!【http://uranai.nosv.org/u.php/novel/Syokaii5/】です。パスは変わりません。 (2017年2月7日 21時) (レス) id: 67d07cb40f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:明咲こより+他の参加者様 x他5人 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2017年1月22日 23時