春となって花咲くまで ページ9
私は周りに妖怪が居ないことを確認し、気配も確認した上で口を開いた。
「私、カイラ様が好きです」
そう伝えると、カイラ様はぽかんとした状態で固まった。
「…は?」
カイラ様のことが好きな気持ちは事実である。
そして誰よりも幸せになって欲しい。
半妖、名家?関係ない。
この想いは、恋愛感情とかでは片付けられるものでは無いし、片付けて欲しくない。
───── 敬愛というのだろうか。
「カイラ様が好きです、尊敬しているんです。貴方の傍にいたいです。
……ですが私はまだまだ未熟なので、カイラ様に胸を張れるぐらいに立派にならないといけません。そこで立派な妖怪になった時、カイラ様の後ろに戻ろうと思います」
「はぁ!?」
カイラ様はこれ以上ないぐらい驚き、私を見つめる。
「カイラ様、勝手にこんな事を伝えてしまってすみません。でも、私、カイラ様の鍛錬を見てきて、自分も強くなろうと思えたんです!努力家で真面目で誰よりも──」
この言葉に嘘はひとつもない。
「カイラ様」
「もういい!それ以上言うなっ……」
カイラ様は褒め慣れていないのだろうか。
耳まで真っ赤だ。
そしてしばらく時間が経ったあと、カイラ様が目を細めて、静かに言った。
「…しかし、A、お前は肝心な事を伝えていない」
「え」
今、名前を呼んでくれた!?
私が固まっているとカイラ様は私の頬をつねった。
「離れる真の理由は、私に近づいたことで何か不利益が生じたのだろう?例えば親の仕事に関すること───といったところか」
「いっ……え?」
「もう知っている」
カイラ様は平然とした様子で言う。
「だから構わない」
「…そう、だったんですね…もう知って…」
知ってたんだ。
カイラ様をもう既に傷つけていたんだ。
「自惚れるな。私は傷ついてなどいない」
カイラ様は嘲笑うように言う。
「私がお前が離れ、寂しいなんて思うわけがないだろう」
「…そうですね。それはそれで私が寂しいですが」
救護室についた。
カイラ様の腕が離れる。
私はカイラ様を見上げると、カイラ様は私の額に強烈なデコピンを一発打ってきた。
「い゛っ!うぅ…!」
「放課後、あの森で鍛錬ぐらいなら付き合ってやってもいい」
「え」
涙を浮かばせながら額をさすっているとカイラ様に小さく笑われた気がした。
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