棘で守られた心 ページ8
「大丈夫だったか…ん?力んだか?唇から血が──」
エンマ様だった。
まずい、よりにもよって、エンマ様にぶつかりそうになるなんて。関わるなと念押しされたばかりなのに。
「大丈夫です!走って周りを見ていなかった私が…」
すぐにエンマ様から離れようとすると、エンマ様は笑う。
笑顔の破壊力すごいなぁ。
普通にカッコイイし、まだ幼いエンマ様は可愛い。
なんかすごくキラキラしてる。
「足を捻ってるな。救護室まで送るぜ?」
「いやいや!それは」
エンマ様は右腕を離してくれる様子は無い。
しかし次の瞬間、勢いよく左側に傾く。
左を見ると、私はまた固まる。
「カイラさま…?」
「エンマ、その手を離せ」
カイラ様はエンマ様を睨み、今にも妖術を出してしまいそうだった。
「離すが…彼女左足捻っているから気をつけて連れて行った方がいい」
カイラ様はエンマ様を無視し、私を静かに抱き上げた。
「え!?カイラ様!?」
「煩い」
幼いカイラ様、普通に私を抱き上げるなんて。私も小さいけど。
横抱きなんて、しかもカイラ様になんて。
ドキドキしないはずがない。
昨日カイラ様と距離を置けと言われたばかりなのに。
こんなこと───
また罪悪感が溢れ出して、唇を噛む。
「唇を噛むな。見苦しいぞ」
「すみません。私重いですよね?そろそろ歩きます」
カイラ様は私をチラリと見たあと、静かに私をおろしてくれたが腕を掴まれたままだ。
「カイラ様?」
「重かったからおろすが、救護室までは支えてやる」
カイラ様は真面目で優しいのだ。
刺々しい言葉で隠れているが本当は誰よりも努力家で優しい。
「ありがとうございます」
あぁ、カイラ様に言ってしまいたい。
あなたの傍に居たいと。
一緒に困難を乗り越える友に。
そして側近になりたいと。
エンマ様とぬらりひょんさんのような信頼し合える関係に。高望みだと分かってる。だけど私は、カイラ様に仕えたい。
カイラ様を見ると、不機嫌そうな表情をしている。
「…なぜ今日は私をそんな目で見る。不愉快だ。いつも以上に変だぞ」
「すみません…」
「謝られるのも不愉快だ。説明しろ」
今日はカイラ様はよく話してくれる。いつもならとても嬉しいのに。
そして、このまま本人に全てを伝えるべきか迷った。
イザナ族と距離を置けと家族から言われた。と
私の勝手な行動で、家族に被害が出た?
─── いやいや、こんなこと言えるわけが無い。
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